計帳(読み)ケイチョウ

デジタル大辞泉 「計帳」の意味・読み・例文・類語

けい‐ちょう〔‐チヤウ〕【計帳】

律令制で、調を賦課するため国ごとに毎年作成された帳簿戸主戸口氏名年齢性別、課・不課の別などを申告させ、国司がまとめて国内人口・調口数・調庸などを算出した。

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精選版 日本国語大辞典 「計帳」の意味・読み・例文・類語

けい‐ちょう‥チャウ【計帳】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制で、調庸雑物を徴収するため、毎年国別に作製された書類。戸籍と並ぶ基本台帳。中央へ集められ、歳入が算出される。大計帳。大帳。
    1. [初出の実例]「又比年計帳、具言如功、推勘物数」(出典:続日本紀‐霊亀二年(716)四月乙丑)
  3. 中国、北朝期から唐宋にかけて、戸籍とともに作られた徴税台帳。県が毎年末、口数、田宅数などにより、次年度の公課の割りあての資料としたもの。その制度は日本の律令制にも受け継がれている。〔漢書注‐武帝紀〕

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改訂新版 世界大百科事典 「計帳」の意味・わかりやすい解説

計帳 (けいちょう)

古代の公課徴収用文書。6世紀に西魏の蘇綽(そしやく)により整えられ,均田租調役制下に盛唐まで使用された。当時毎年末に各戸主から戸口・田土を申告する〈手実〉を提出させ,県・州でまとめそれに基づいて当年徴収すべき課役を集計して州から都の民部(戸部)に送り,度支(たくし)が全国の財政計画を作成するたてまえであった。計帳には各戸のデータと,各段階での集計の両者が含まれる。敦煌文書中に547年(大統13)と推定される計帳断巻が知られる。
執筆者:

古代律令制下の公文書の一つ。戸籍と併せて籍帳と連称され,律令制的人民支配の基礎となったきわめて重要な官簿であった。日本にも中国の制度が受けつがれたものである。その初見は《日本書紀》大化2年(646)正月朔日条のいわゆる〈大化改新詔〉で,〈初造戸籍・計帳・班田収授之法〉と見える。しかしその後大宝令(701施行)に至るまでまったく史料上の所見はなく,上記の改新詔の規定が疑われるとともに,はたして大宝令以前に実際に計帳が作成されたかどうかについても不明というほかはない。

 計帳作成に関する唐制は伝存史料に乏しいが,それを継受した日本令の規定では,まず京職や諸国の官司は毎年6月30日以前に部内の各戸から〈手実〉を提出させることとなっていた。この手実とは各戸主が戸口の姓名・年齢等を書き上げた申告書で,唐制ではこれにさらに田宅の記載が加わる。京職や国司はこの手実を基礎史料として一定の書式に従った計帳を作成し,8月30日までに中央の太政官へと申送することになっていた。この京進される計帳は大宝令では国帳と称されており,それは一国全体の戸数・口数・調庸物数を書き上げた統計的文書を意味していた。中央官司ではこれによってあらかじめ歳入予定額を知り,予算編成作業を行うとともに,調庸収奪の基礎となる全国の口数,とりわけ課口数の推移を把握したのである。

 このように令規定における計帳には手実と国帳(これはまた目録とも呼ばれる)とがあるが,そのほかになお歴名と称される計帳文書があった。これは京国の官司によって里(郷)を単位としてまとめられたもので,各戸提出の手実の内容に戸ごとの集計と公課を付し,それを一里全体にわたって書き連ねた体裁をもつ。ちょうど手実と目録との中間段階に位置する文書で,唐制においても手実・歴名・目録に対応する3種の文書(手実・郷帳・計帳)があったようである。この歴名がはたして目録とともに京進されたかどうかについては議論があるが,717年(養老1)以降についてはその可能性がある。この年新たに大計帳の書式が諸国に頒下され,従前の計帳になんらかの整備・改定が加えられたらしいが,以後京進される計帳を指す名称としては,この大計帳を略した大帳という語が定着していく。この大帳について一般には単に目録のみを指すものとされるが,〈大帳内目録〉という用語例があり,おそらく目録に歴名をも付属させていたものであろう。この大帳を上進する京国の官人が大帳使であり,それはまた本来的に計帳使とも呼ばれた。この計帳制度も律令体制の弛緩にともない,9世紀を通じてしだいに衰退していった。東大寺正倉院には8世紀の計帳が手実・歴名・目録ともに遺存し,近年また各地から漆紙文書の形で歴名様文書の断簡が出土している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「計帳」の意味・わかりやすい解説

計帳
けいちょう

(1) Ji-zhang 中国,隋,唐時代の徴税台帳。北朝の西魏に始る。均田,租調役制度による人民支配の基礎となる重要帳簿。毎年春に百戸の代表者である里正が管轄下の戸主から家族,土地などを記入した申告書を提出させ,それをもとに州,県ごとに,翌年度に徴収すべき税額などを集計し,首都の度支 (財政官庁) に送る規定であった。敦煌文書中に大統 13 (547) 年,西魏のものと推定される計帳らしい残巻が見つかっている。 (2) 日本の令制の調庸賦課の台帳。大計帳,大帳ともいう。戸籍とともに令制の基本的帳籍。毎年6月 30日以前に,国司は各戸主に,その戸口の氏名,年齢,容貌,課・不課の別などを注記した手実 (しゅじつ。書類) を提出させ,これをまとめて,国内の人口,課口数,調庸の総数などを算出した。これを計帳といい,写しを1通作成して,1通は国におき,もう1通は大帳使に持たせて8月 30日以前に太政官に送り点検を受け,調庸の徴収台帳として6年間保存された。正倉院文書には,右京,山城,近江などの計帳の断簡 (だんかん) がある。律令政治がゆるむにつれて,その作成も忠実には行われず,10世紀中頃には戸籍によって計帳が作られるような状態になった。

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百科事典マイペディア 「計帳」の意味・わかりやすい解説

計帳【けいちょう】

古代の人頭税の台帳。租税を集計した帳簿の意。中国では南北朝時代の戸籍制度のなかで整備され,隋唐時代には各戸の手実(しゅじつ)(申告書)を基礎に毎年作成,3年ごとの戸籍の資料とする。朝鮮・日本もこれにならい,日本では大宝令で作成開始,ほぼ10世紀まで継続した。なお大化改新の際の〈改新之詔(かいしんのしょう)〉に〈計帳〉がみえるが,大宝令以前に実際に作成されたかは不詳。→戸籍
→関連項目公文郷戸諸陵寮律令制度

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「計帳」の意味・わかりやすい解説

計帳
けいちょう

戸籍と並ぶ、律令(りつりょう)時代の民衆把握の基本台帳。各戸内の名前、性別、年齢、場合によっては容貌(ようぼう)上の特徴などを書き上げ、それによって年ごとに課口、不課口(調庸負担の有無)を確定した。戸籍の六年一造に対して毎年作成され、計帳使によって8月30日以前に太政官(だいじょうかん)に提出された。個別の人名を列記した部分(歴名(れきみょう))と、それらを集計した部分(目録)とからなり、目録の部分をとくに大帳あるいは大計帳とよんだというのが通説だが、それは目録、歴名をあわせて京進(きょうしん)された場合の呼び方であるとする説も有力である。大化改新詔が初見だが、実際に作成され始めたのは、大宝令(たいほうりょう)施行後と考えられる。

[福岡猛志]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「計帳」の解説

計帳
けいちょう

律令制下,調庸などを賦課するための台帳として毎年作成された帳簿。6月末以前に戸ごとに姓名と年齢を記した手実(しゅじつ)が徴収され,整理・浄書が行われて計帳歴名(れきみょう)が作成される。これをもとに国ごとの戸口や課口・不課口の合計数などを記した大計帳が国司によって作成され,8月末以前に太政官に提出され民部省に下された。日本では手実・計帳歴名・大計帳を計帳と総称する。一般庶民についての計帳以外にも,諸王や品部(しなべ)・隼人(はやと)・俘囚(ふしゅう)などの計帳があった。717年(養老元)大計帳式が諸国に下されて,「延喜式」に大帳としてみえる書式が定まった。一方,計帳歴名は「延喜式」に計帳とあるが,その京進については諸説がある。

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旺文社日本史事典 三訂版 「計帳」の解説

計帳
けいちょう

律令制における調・庸などの徴収のための原簿
四度公文 (よどのくもん) の一つ。毎年,各戸主に戸口の氏名・年齢・性別・課・不課の別を申告させ,国司が国ごとにまとめたもの。正倉院に断片が残る。

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普及版 字通 「計帳」の読み・字形・画数・意味

【計帳】けいちよう

戸籍簿。

字通「計」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の計帳の言及

【家数人馬改帳】より

…すなわち役負担可能な家(役家)と役夫の台帳である。古代の計帳の系譜を引く帳簿で,鎌倉・室町期には実施されなかったが,戦国期に入り,戦国大名は領国の総力をあげて戦う必要に迫られ,農民を単なる年貢負担者としてだけでなく,陣夫としてあるいは戦闘員として編成することが要請された。1582年(天正10)後北条氏は領内一円に人改めの令を出しているが,はたして87年村々から役に立つ者どもを動員して戦に備えた。…

【浮浪・逃亡】より

…日本古代律令体制のもとでの本籍地離脱者をさす法律用語。当時の人々は戸籍計帳に登録され,その本籍地(本貫)に居住せしめられたが,きびしい規制のもとでも,本籍地を離脱して流浪したり他所に居住したりする者があった。両者をあわせて〈浮逃〉とも略称される。…

※「計帳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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