富裕税(読み)フユウゼイ

デジタル大辞泉 「富裕税」の意味・読み・例文・類語

ふゆう‐ぜい【富裕税】

高額純資産所有者を対象とする経常税。日本では昭和25年(1950)に創設されたが、同28年に廃止

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「富裕税」の意味・読み・例文・類語

ふゆう‐ぜい【富裕税】

〘名〙 五百万円以上の資産を有する者に対して課された財産税。昭和二五年(一九五〇シャウプ勧告に基づいて設けられたが、同二七年廃止。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「富裕税」の意味・わかりやすい解説

富裕税 (ふゆうぜい)

経常財産税一種であり,所得税補完税として賦課徴収される税。臨時財産税とは異なり毎年課税されるが,税率も低く,普通はこの税の支払のために財産を処分する必要はなく,所得から支払われる。所得税は所得が生じて初めて課されるから自家用の土地や家屋などは課税されなかったり,所得税の税務行政上の不完全さのゆえに課税をまぬかれる場合が生じうる。また,再分配の目的で所得税の累進税率を高くすると,勤労意欲や貯蓄意欲を損なったりして望ましからぬ効果が生じうるが,富裕税は,このような所得税の不完全性や欠陥を補完するために課せられる。日本では,シャウプ勧告に従い〈富裕税法〉(1950公布)に基づき,国税として1950年度から富裕税という名称で創設されることになった。これに応じて,所得税の最高税率が85%から55%に引き下げられた。しかし,納税者の所有財産が明らかになることなどを理由とする反対も強く,また財産価値の評価の困難さのゆえに,52年度限りで廃止された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「富裕税」の意味・わかりやすい解説

富裕税
ふゆうぜい
net worth tax

経常財産税の一種であり、所得税の補完税として賦課徴収される税。臨時財産税とは異なり毎年課税されるが、税率も低く、普通はこの税の支払いのために、財産を処分する必要はなく、所得から支払われる。所得税は所得が生じて初めて課されるから自家用の土地や家屋などは課税されなかったり、所得税の税務行政上の不完全さのゆえに課税を免れる場合が生じうる。また、再分配の目的で所得税の累進税率を高くすると、勤労意欲や貯蓄意欲を損なったりして望ましからぬ効果が生じうるが、富裕税は、このような所得税の不完全性や欠陥を補完するために課されるものである。わが国では、シャウプ勧告に従い1950年度(昭和25)に創設され、これに応じて、所得税の最高税率が85%から55%に引き下げられた。しかし、納税者の反対が強く、また財産価値の評価の困難さのゆえに、52年度限りで廃止された。

[林 正寿]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「富裕税」の意味・わかりやすい解説

富裕税
ふゆうぜい
wealth tax

財産税の一つで,高額資産所有者に課税する。所得が生じた際に課税される所得税を補完するものとして,長期保有する不動産などの資産に低率課税する。日本では,シャウプ勧告に基づき 1950年度に導入されたが,資産価値評価の不透明さに加え,保有資産が明確になることから不評で,1952年度末に廃止された。ヨーロッパではドイツ,フランスオランダ,北欧諸国などで実施されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「富裕税」の意味・わかりやすい解説

富裕税【ふゆうぜい】

財産税の一種。日本ではシャウプ勧告により1950年創設された国税。所得税の補完税として,純財産価額が500万円を超える個人に対し,その超過金額に0.5〜3%の超過累進税率で課税。納税者の反対などのため1953年廃止。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の富裕税の言及

【財産税】より

…課税標準は財産価値ではあるが,税源は所得であるとみなされるから,実質的には所得税の補完税であることが多い。シャウプ税制勧告に基づいて1950年に創設された富裕税はこの経常財産税の例であり,この税の導入にともなって当時の所得税の最高限界税率が85%から55%まで引き下げられたのは,富裕税のもつ所得税の補完税としての性格を反映するものである。富裕税は,財産の明示を嫌う納税者の強い抵抗と,税務行政上の困難という理由によって52年限りで廃止されたが,その代りに所得税の最高限界税率が75%に引き上げられた。…

【シャウプ勧告】より

…なお,法人利潤算定に当たっては,インフレーションで減価した固定資産を再評価して資本価値の保全を図る一方で,再評価税徴収を定めた。そのうえで納税協力確保のために所得税率の最高限度を大幅に引き下げる一方,高額所得階層には富裕税を用意し,生産や投資への阻害作用を避けつつ,しかも所得課税の高度累進を実質的に保ち,かつ資産所得の逋脱(ほだつ)を防ごうとした。相続税を,相続財産および贈与財産について一生を通じる累積課税としたのも,資産保有の集中を防ぎ,高額資産に確実に課税しようという趣旨である。…

※「富裕税」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android