翻訳|property tax
納税者が財産を所有しているという事実に着目して課される税をいう。所得がフローの概念であるのに対して,財産はストックの概念であり,ある特定時点において個人あるいは法人の納税者の所有している財産の価値が,財産税の課税標準を形成する。今日では納税者の担税力の指標として所得をとるのが一般的であるが,所得額に関して同等ならば,財産額の多い納税者のほうが担税力が高いとする考え方も広く受け入れられており,フローに対する税を補完する税として,財産税は重要な位置を占めている。
財産税の分類は種々の形でなされているが,狭義の財産税は財産所有税と呼ばれ,個人あるいは法人の納税者がある一定時点で所有する財産価値を総合して課税する人税である。財産所有税は,さらに経常財産税と臨時財産税に分類されるが,経常財産税は名目的財産税とも呼ばれ,その支払のために財産を手放す必要はなく,年々の所得から支払われると考えられる税である。課税標準は財産価値ではあるが,税源は所得であるとみなされるから,実質的には所得税の補完税であることが多い。シャウプ税制勧告に基づいて1950年に創設された富裕税はこの経常財産税の例であり,この税の導入にともなって当時の所得税の最高限界税率が85%から55%まで引き下げられたのは,富裕税のもつ所得税の補完税としての性格を反映するものである。富裕税は,財産の明示を嫌う納税者の強い抵抗と,税務行政上の困難という理由によって52年限りで廃止されたが,その代りに所得税の最高限界税率が75%に引き上げられた。臨時財産税は一度限り臨時に課される税であり,税率も高い。日本で第2次大戦後に課された財産税,戦時補償特別税,非戦災者特別税等は,この臨時財産税の例である。
財産税の別の分類法として,一般財産税と個別財産税の区別がなされる。一般財産税というのは,富裕税のように,納税者の所有する財産の総額から負債の総額を差し引いた財産純価値額を課税標準として課する人税であるが,個別財産税というのは,現行の固定資産税やかつての地租や家屋税のように,個別の財産を課税対象とし,負債を差し引くことなく個別財産の総価値を課税標準として課される税である。個別財産税の歴史は古く,明治以降の日本の例をとっても1873年(明治6)には地租が制定され,田,畑,市街地の地価を課税標準として課税された。また家屋税も古くからある税であり,82年には坪数を課税標準として課税されている。償却資産に対する税としては,1869年に船舶に対する課税が行われた。そのほかにも電柱,軌道,原動機,冷凍機,織機,印刷機,荷役施設等のさまざまの事業用資産に対して個別財産税が課された。現行の固定資産税は土地,家屋,償却資産の価値を課税標準として,定率で課されるが,固定資産税はその課税標準の遍在性と税収の安定性のゆえに,世界各国において地方税としての重要な地位を占めている。
執筆者:林 正寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
納税者が財産を所有しているという事実に着目して課される税。経済的に重要な概念上の区別がフローとストックの間になされるが、財産税はストックに対する税であり、フローである所得などと同じく、ストックである財産も担税力を有すると一般に考えられている。
財産税は特定の財産を課税物件として物税の形で課することもできるし、一個人の財産価値を合計して人税として課することもできる。わが国の地方税の固定資産税や都市計画税、特別土地保有税、自動車税、軽自動車税などは前者の例であり、おのおのの形態の財産の所有に担税力をみいだしている。後者の例としては、シャウプ税制勧告に基づいて1950年(昭和25)から短期間実施された富裕税(1952年限りで廃止)や相続税(1953年に改正)などがある。
わが国の固定資産税や、イギリスのレートrates、アメリカのプロパティ・タックスproperty taxなどは、いずれも地方財政の財源として重要な存在となっている。これらは、土地、家屋、工場や固定資本設備を課税物件とするものであり、地方公共団体間の移動が少ないことと、収入の安定性などの性格のゆえに、地方税として適当なものと考えられている。課税標準には、財産の価値評価額をとる場合と、イギリスのレートのようにそれの生み出す賃貸価値をとる場合とがある。
[林 正寿]
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一般には各人の所有財産全体に課される一般財産税をさし,日本では1946年(昭和21)に実施されたものをさす。第2次大戦前にも22年(大正11)の臨時財政経済調査会の税制整理案,36年の馬場鍈一(えいいち)蔵相の税制改革案などに一般財産税創設案がみられるが実現しなかった。戦後は46年11月公布の財産税法により財政再建・戦時利得吸収・インフレ抑制を目的として実施された。同年3月3日午前零時現在に財産を有する者を納税義務者として個人の財産全体を課税対象とし,最高税率90%の高率累進税率で1回限り賦課する臨時税として施行され,51年までに約470億円を徴収した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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