知恵蔵 「尖閣諸島問題」の解説
尖閣諸島問題
(高橋進 東京大学大学院法学政治学研究科教授 / 2007年)
尖閣諸島問題
2010年9月7日、同領海内で中国トロール漁船が海上保安庁の巡視船に衝突。同庁は中国人船長を公務執行妨害容疑で逮捕した。これに中国政府が猛反発。12日未明、外交担当国務委員・戴秉国(たいへいこく)が、駐中国大使・丹羽宇一郎を呼び出し、船長の即時釈放を求めた。日本側が応じないと、中国は閣僚級以上の交流停止、青少年交流イベントの中止、レアアースの輸出禁止などの対抗措置を取り、20日には、建設会社フジタの日本人社員4人を、軍事管理区域(河北省)に不法侵入したという理由で拘束した。こうした露骨な対日圧力に対し、菅直人内閣は「国内法に基づき粛々と判断する」と繰り返してきたが、最大の貿易相手国でもある中国との「戦略的互恵関係」修復を優先し、一転して譲歩。24日、内閣の意向を受けたと見られる那覇地検は、処分保留のまま中国人船長を釈放し、記者会見では「今後の日中関係を考慮した」と説明した。
(大迫秀樹 フリー編集者 / 2010年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報