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尿細管疾患 にょうさいかんしっかんTubular Disease

家庭医学館の解説

にょうさいかんしっかん【尿細管疾患 Tubular Disease】

[どんな病気か]
 血液は糸球体(しきゅうたい)で濾過(ろか)されて原尿(げんにょう)となり、尿細管(にょうさいかん)の中に流れ込みます。原尿には、からだが必要とする成分もたくさん含まれており、尿細管は必要に応じて、これらの物質を尿の中からからだにひきもどします(再吸収)。また、尿細管には、からだにたまった余分な酸を尿中に排泄(はいせつ)するはたらきもあります。
 アルドステロン、副甲状腺(ふくこうじょうせん)ホルモン、抗利尿ホルモンが尿細管にはたらくことによって、原尿からの再吸収が調節され、体液の性質が保たれます。
 なんらかの原因で尿細管のはたらきに異常がおこると、からだに必要な物質が尿にもれ出たり、余分な酸が排泄できなくなって血液が酸性になったりします。
 また、尿細管にはたらくホルモンも血液が運ぶので、うまくはたらかなくなり、体液の電解質(カルシウムやナトリウムなどの水に溶ける物質)の濃度や、生体の膜(まく)を通した水などの移動がうまくいかなくなります。
●尿細管疾患の分類
 尿細管は、再吸収する物質が異なるいくつかの部位に分けることができます。また各ホルモンによって、その作用を受ける部位もちがいます。そのため尿細管の病気は、どこが障害されたかによって分類するのが一般的です。
 近位尿細管疾患(きんいにょうさいかんしっかん) 近位尿細管の病気を表「代表的な近位尿細管疾患」に示しました。
 近位尿細管では糸球体で濾過されたアミノ酸、ぶどう糖、リン、尿酸(にょうさん)、体内のアルカリの主成分である重炭酸イオンのほとんどが再吸収されます。近位尿細管に異常がおこると、これらの物質が尿に大量にもれ出ます。
 また、近位尿細管には、副甲状腺ホルモンの作用を受けるもの(受容体)があり、その受容体に異常があると、副甲状腺機能低下症(ふくこうじょうせんきのうていかしょう)(「副甲状腺機能低下症(上皮小体機能低下症)」)と似たような症状がみられることがあります。
 これを偽性副甲状腺機能低下症(ぎせいふくこうじょうせんきのうていかしょう)といいますが、低カルシウム血症、高リン血症となり、副甲状腺ホルモンを用いても改善はしません。
 ファンコニ症候群(しょうこうぐん) 近位尿細管のはたらきが全面的に障害されておこる病気で、原因としては、遺伝のほか、M(エム)たんぱく血症(けっしょう)(抗体(こうたい)以外の免疫(めんえき)グロブリンの一種、Mたんぱくが血液中に増えた状態で、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)でおこることもある)や悪性腫瘍などがあります。
 症状は、アミノ酸尿、腎性糖尿(じんせいとうにょう)(糖尿病ではないが、尿にぶどう糖がもれ出る状態)、リン酸尿、近位尿細管性アシドーシス(重炭酸イオンが尿中にもれて血液が酸性に傾く状態)がみられます。
 ヘンレ係蹄上行脚疾患(けいていじょうこうきゃくしっかん) 尿細管の一部、ヘンレ係蹄の上行脚は、ナトリウムおよび塩素イオンの再吸収が活発に行なわれています。この部位の病気としては、バーター症候群(しょうこうぐん)があります。
 バーター症候群の根本的な原因は明らかではありませんが、塩素イオンの再吸収過程がうまくいかず、塩素イオンとともにナトリウムイオンが尿中に大量にもれ出るため、体液量が減って、レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系が活発になり、アルドステロンが増えます。
 強力に血圧を上げるはたらきのあるアンギオテンシンⅡも増えていますが、血圧は正常ないし低下します。
 遠位部(えんいぶ)ネフロン疾患(しっかん) 遠位尿細管は、余分な酸を尿中に排泄していますが、ここが障害されると酸が体内にたまり、遠位尿細管性(えんいにょうさいかんせい)アシドーシスになります。この病気が近位尿細管性アシドーシスと異なる点は、尿路結石(にょうろけっせき)をともなうことが多いのと、治療に大量のアルカリ製剤が必要なことです。
 尿細管は腎盂(じんう)に開口する前に集まって集合管になりますが、ここに抗利尿ホルモンが作用すると、水が再吸収され尿が濃縮されます。これは集合管にある抗利尿ホルモンの受容体を通じてなされるので、集合管に異常があると抗利尿ホルモンが作用せず尿量が増えます。これが腎性尿崩症(じんせいにょうほうしょう)(コラム「腎性尿崩症」)です。
[治療]
 近位尿細管性アシドーシスやファンコニ症候群には、不足している重炭酸ナトリウムを補充する治療を行ないます。このとき、ナトリウム増加によって生じる低カリウム血症を予防するため、カリウム製剤を併用します。
 バーター症候群には、集合尿細管でのナトリウムの再吸収を抑制するか、低カリウム血症に対する補充療法を行ないます。
 また、遠位尿細管性アシドーシスには、低カリウム血症型と高カリウム血症型があり、治療法が異なります。いずれにしても、尿細管疾患では、障害された部位を検査できちんと把握し、症状に応じた治療を行なうことがたいせつです。

出典|小学館家庭医学館について | 情報

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