日本大百科全書(ニッポニカ) 「屋嘉比朝寄」の意味・わかりやすい解説
屋嘉比朝寄
やかびちょうき
(1716―1775)
沖縄三味線音楽「当流」の祖。照喜名聞覚(てるきなもんがく)(1682―1753)に師事し、師の没後、その唱法や三味線奏法に大改革を加えて「当流」を樹立。その改革は、彼が若いころ薩摩(さつま)(鹿児島県)で学んだ謡曲の荘重な唱法の導入と三味線奏法の簡略化にあった。さらに中国の工尺譜(こうしゃくふ)に倣って初めて三味線譜をつくり、これに117曲を書き留め、整理した。これは俗に「書き流し工六四(クルルンシー)」といわれ、後の野村流、安冨祖(あふそ)流の記譜法「工工四(クンクンシー)」のもとになった。後世の沖縄三味線音楽の発展と深化に多大な影響を与え、彼をこの分野の中興の祖とする。
[當間一郎]