川端康成の長編小説。1949年から54年にかけて文芸各誌に分載されて成った。家庭のきずなに煩わされない男女の純粋培養された恋愛を描くことの多かった作者が,珍しく家庭を描いて注目された作。尾形信吾と妻保子の老夫婦,長男修一と嫁の菊子,夫相原と離別して2児を連れて実家に帰った長女房子の3家族構成からなる。場面は3家族の住む鎌倉の家庭と,信吾・修一が同会社に勤務する東京と,信吾が憧れていた美貌の義姉(保子の姉)の住んでいた信州の3ヵ所にわたる。信吾は亡き義姉の形代(かたしろ)を嫁の菊子に見て精神の放蕩をする。修一は性的に幼い菊子にあきたらず妾絹子と放蕩する。夫のそうした侮辱に傷ついた菊子は義父の信吾に心を寄せ,その複雑な心理が老人の死の恐怖,多用される夢とからんで展開される。
執筆者:長谷川 泉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
川端康成(やすなり)の長編小説で戦後の代表作。1949~54年(昭和24~29)『改造文芸』など諸誌に分載、54年筑摩(ちくま)書房より刊行。野間文芸賞受賞。還暦を過ぎた信吾(しんご)は山の鳴る音を聞き、死の予告かと恐怖に襲われた。味けない生涯を送り、死も近いと思われる信吾に、息子修一の嫁菊子(きくこ)が生の明かりと思われたりする。しかし菊子に対する自分の内奥の欲望に気づいたとき、信吾は菊子を自分から引き離し、老いと死に対することを決意する。老年の夢と悲哀と覚悟とを季節の流れを背景に描いた象徴的作品。能や俳諧(はいかい)の伝統も流れている。
[羽鳥徹哉]
『『山の音』(旺文社文庫・新潮文庫)』
二十四節気の一つ。元来,太陰太陽暦の 12月中 (12月後半) のことで,太陽の黄経が 300°に達した日 (太陽暦の1月 20日か 21日) から立春 (2月4日か5日) の前日までの約 15日間で...
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