山の音
やまのおと
川端康成(やすなり)の長編小説で戦後の代表作。1949~54年(昭和24~29)『改造文芸』など諸誌に分載、54年筑摩(ちくま)書房より刊行。野間文芸賞受賞。還暦を過ぎた信吾(しんご)は山の鳴る音を聞き、死の予告かと恐怖に襲われた。味けない生涯を送り、死も近いと思われる信吾に、息子修一の嫁菊子(きくこ)が生の明かりと思われたりする。しかし菊子に対する自分の内奥の欲望に気づいたとき、信吾は菊子を自分から引き離し、老いと死に対することを決意する。老年の夢と悲哀と覚悟とを季節の流れを背景に描いた象徴的作品。能や俳諧(はいかい)の伝統も流れている。
[羽鳥徹哉]
『『山の音』(旺文社文庫・新潮文庫)』
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山の音
①川端康成の小説。1949年から1954年にかけて発表された。年老いた主人公が息子の嫁に抱く情愛や死への恐怖を描く。1954年、第7回野間文芸賞受賞。
②1954年公開の日本映画。①を原作とする。監督:成瀬巳喜男、脚色:水木洋子、撮影:玉井正夫。出演:山村聡、長岡輝子、上原謙、原節子、中北千枝子、斎藤史子、杉葉子ほか。第9回毎日映画コンクール男優主演賞(山村聡)受賞。
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やまのおと【山の音】
小説。川端康成作。昭和二四~二九年(
一九四九‐五四)発表。込み入った家庭生活や戦後の
世相の中で
倦怠と憂鬱を抱えて生きている主人公尾形信吾と、しとやかで可憐な息子の嫁菊子とのプラトニックな愛を描く。
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やまのおと【山の音】
川端康成の小説。昭和24年(1949)から昭和29年(1954)にかけて発表。年老いた主人公が息子の嫁に抱く情愛や死への恐怖を描く。昭和29年(1954)、第7回野間文芸賞受賞。同年映画化された。
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やまのおと【山の音】
川端康成の長編小説。1949年から54年にかけて文芸各誌に分載されて成った。家庭のきずなに煩わされない男女の純粋培養された恋愛を描くことの多かった作者が,珍しく家庭を描いて注目された作。尾形信吾と妻保子の老夫婦,長男修一と嫁の菊子,夫相原と離別して2児を連れて実家に帰った長女房子の3家族構成からなる。場面は3家族の住む鎌倉の家庭と,信吾・修一が同会社に勤務する東京と,信吾が憧れていた美貌の義姉(保子の姉)の住んでいた信州の3ヵ所にわたる。
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