日本大百科全書(ニッポニカ) 「崔南善」の意味・わかりやすい解説
崔南善
さいなんぜん / チェナムソン
(1890―1957)
朝鮮の歴史家、詩人、思想家。号は六堂。早稲田(わせだ)大学に就学したのち帰国し、李光洙(りこうしゅ/イグァンス)と並んで新文化運動の先駆者となった。1919年、三・一独立宣言書を起草し投獄され、のち朝鮮総督府管下の朝鮮史編修委員会委員を経て、1938年「満州国」の建国大学教授。解放(1945)後の1949年、反民族行為処罰法により収監されるが、病気のため1か月で保釈された。彼の業績は、第一に、初期において各種出版物を通じて自主独立と新教育、新思想を鼓吹した啓蒙(けいもう)家としてのそれであり、第二に、国文を主とし漢文を従とする新しい文体を創造し、自ら出版する雑誌に朝鮮最初の自由詩(散文詩)を発表したほか、古典的短詩型である時調(じちょう/シジョ)を近代によみがえらせたこと、第三に、散逸する古書を収集、古典研究、歴史研究に大きな成果をあげたことである。
[大村益夫]
『崔南善著、相場清訳『朝鮮常識問答(朝鮮文化の研究)』(1965・宗高書房)』