切り立った岩山をうがって築かれた墓で,中国で見られる。一つは満城漢墓,曲阜九竜山漢墓のごとく前漢代の大型墓で,長大な墓道と巨大な前・後室,それに多数の耳室と豪華な副葬品をもつものである。通例ならば平地の墳丘墓として築かれるはずのところ,神仙思想によるか,墳墓隠蔽のためか,あるいは他のなんらかの理由で岩山が墓地に選ばれたものである。江蘇省銅山小亀山崖墓は竪穴式墓道に単室の墓室のみの小型墓であるがこれも同類である。これらはいずれも1墓が1人の被葬者のためにのみ築かれた特殊例である。これに対し,一般的に崖墓といわれるのは,四川省と雲南省の一部で後漢から魏晋南北朝期にかけて盛行した墓制で,岷江,嘉陵江など長江上流域の岩壁を水平に掘り込んで築かれ,日本の横穴のごとく累々(るいるい)と連なる情景が見られる。成都天廻山崖墓群は後漢代の典型で,単室のものと,長大な墓道をもち,墓門の奥に2~3棺(夫婦か)を収める墓室を枝葉のように多数掘り出したものとがある。棺には瓦棺,塼棺,木棺のほか,浮彫を施した石棺も見られる。出土の副葬品では素朴な農民の姿を活写した説唱俑が名高い。その他の墓出土の俑や水田水池の模型も陶製のもののほか,砂岩製のものが見られるのも特色である。楽山県,彭山県一帯の崖墓では入口や墓室に木造建築を掘り出したものがあり,楽山県麻浩墓の壁面浮彫には仏像があらわされている。魏晋南北朝期のものは昭化県宝輪鎮の例では短い前室の後方に1室または並列した2室の棺室をもつが,概してこの時期の崖墓は後漢代のものに比して小型である。このほか,長江流域一帯に広く分布する懸棺葬墓(断崖の中腹に挿した木杭に木棺を置く葬俗)に,崖墓と同様の構造をもつものがあり,これは〈(ほく)人〉が漢族墓葬をまねて築いたものである。また,江西省貴渓,福建省崇安の武威山脈南北に,険しい断崖の自然の洞穴を利用した戦国時代の墓葬があるが,これは崖洞墓といい,崖墓とは区別される。
執筆者:秋山 進午
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…そこで,副葬品も生前用いたと同じ武器,道具,楽器,食料品,明器(めいき)など,数量が多くなり,当然墓室も広くなり,壁画で飾られた墓も出てきた。洞窟墓の系統に,四川省では崖面を利用し,崖に横穴式の墓を掘る崖墓というものもある。内部は洞窟墓と同じように墓道がつくられ,大規模なものは多くの墓室を備えている。…
…遺体あるいはそれを納めた棺は,そのまま床下,屋外,野外,洞窟,岩陰などに土葬することもある。また,崖や斜面にうがった横穴(よこあな)やそれに続く墓室(中国後漢代の崖墓(がいぼ),日本古墳時代の横穴),垂直に掘り下げてから水平方向に掘った横穴(南ロシア青銅器時代の地下式横穴墓,宮崎・鹿児島県の地下式横穴),地下の坑道の壁面にうがった横穴(ローマの初期キリスト教徒の墓所であるカタコンベ)に納めることもある。石,塼(せん),木などで構築した墓室内に棺を納めることも多い(石室,塼室墓)。…
※「崖墓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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