画像石(読み)ガゾウセキ(その他表記)huà xiàng shí

デジタル大辞泉 「画像石」の意味・読み・例文・類語

がぞう‐せき〔グワザウ‐〕【画像石】

宮殿墳墓祠堂しどうなどの石材に、線刻や浮き彫りでさまざまな画像を表したもの。中国後漢六朝時代に流行した。画題神話孝子伝・宴会・歴史説話など。

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精選版 日本国語大辞典 「画像石」の意味・読み・例文・類語

がぞう‐せきグヮザウ‥【画像石】

  1. 〘 名詞 〙 中国で神仙、聖賢、孝子、鳥獣、車馬などの画像を宮殿、祠堂、墳墓の壁面に彫りつけたもの。漢代の山東省孝堂山の祠堂や武氏石室の画像が特に有名。

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改訂新版 世界大百科事典 「画像石」の意味・わかりやすい解説

画像石 (がぞうせき)
huà xiàng shí

平板な石材に画像を彫刻したもので,中国で建築物,墓室などの建材として使用された。画象石とも書く。時代は漢・魏が中心で,その後,南北朝・隋唐代に及ぶ。地上の建築物では石祠堂,石闕(せつけつ)の壁面などにみられ,地下のものでは墓室の石壁,石柱,楣石(まぐさいし),天井石と石棺にみられる。それらは同時代の建築である木造宮殿,邸宅,木造廟堂や闕にかざられた壁画,地下墓室の壁画,壁面にぶらさげられた帛画(はくが)の応用で,内容はほぼ同じである。特に墓室のものは被葬者の生前の生活が,死後も彼岸の世界である墓室内で同じように続けられると考えて,墓室内に生前と同じような生活用具を入れ,それと同時に,生前のもっとも光輝ある場面,すなわち車馬行列,宴楽,謁見などをはじめ,すべての生活に関係する場面を壁面にあらわした。また,地上の建築物の壁画にあって,座右の銘としたと思われる,儒教思想にもとづく忠臣・孝子・烈士・貞婦の図,孔子,老子などの図もみられる。このため画像石は当時の生活,風俗,思想を知るうえで重要な資料となっている。地上祠堂(武氏祠など)では中央正面にもっとも重要な拝礼図をおくなど,画像石にはその画像によりほぼ置かれる位置が定まっており,墓室では,門には門守像,門扉には鋪首と門守の代りをする動物像,門柱・門楣石には神霊界の奇怪な神獣・神仙の図と瑞獣像,前室壁には車馬出行や饗宴の画像,天井には日月星宿や瑞象の図がある。一部の画像石では画像のそばに傍題や紀年を刻した銘文があり,画題や製作年代を考える手がかりをあたえてくれる。

 製作方法には次の六つがある。(1)石の表面を水磨きで平らにして,画像を線画のように陰刻にする。この場合は彩色された可能性がある。(2)画像の輪郭の内面をほり下げ,そこを平らにする。さらに画像のない地のところは垂直平行ののみ跡を一面につける。山東省の画像石に多い。(3)画像の輪郭の内部は平滑にし,外面の地のところを削りくぼめる。影絵風に画像を浮き上がらせる浮彫風のレリーフとは区別される。精巧なものでは画像にこまかい毛彫(針彫)が加わり,なかには画像の人物の目や鼻を線刻でなく,筆がきによって表現したものもある。(4)画像の輪郭の外面に,平行線ののみ跡を斜めに施す。(5)画像の面を水磨きせず粗彫の跡をのこす。(6)半肉彫で画像を浮き出させるもので,画像の細部に線刻を加える。

 画像石は山東省にもっとも多く,全省域でみられる。そのほかでは,山西河南,陝西,甘粛四川,江蘇,安徽,湖北の各省に及んでいる。画題,表現様式,技法にはこれらの地方において差がある。

 画像石に類するものに画像塼がある。これは画像,文様を細泥でつくられた塼の表面にスタンプしたり,型づくりしたもので,戦国時代末期から前漢代初期にかけての空心塼からはじまって,六朝時代の文様塼にいたるまである。後漢代の四川地方(蜀)でつくられた墓室壁面をかざったものや,南京付近の南朝墓での竹林七賢図などは特に有名である。
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百科事典マイペディア 「画像石」の意味・わかりやすい解説

画像石【がぞうせき】

画像を彫刻した石。普通,前末期に始まり,後漢に盛行,三国時代には衰退するものの,にも及ぶ。山東省が最も多く,山西・河南・甘粛・四川・陝西省など広く分布する。宮殿,祠堂(しどう),墓室など建造物の石材に人物,車馬,戦闘,伝説などを刻み込んだものをさす。彫刻の技法には陰刻と陽刻があり,陰刻では孝堂山石祠,陽刻では武氏祠が有名。画像の題材は被葬者の生前の生活や,儒教思想にもとづく老子・孔子の図,神仙説に関係あるものが多く,当時の風俗,思潮などを知る資料として貴重。
→関連項目浮彫沂南画像石墓

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「画像石」の意味・わかりやすい解説

画像石
がぞうせき
Hua-xiang-shi

画象石とも書く。中国,後漢代に盛行した石造の墳墓,墓前の石祠堂,石闕 (せっけつ) に浮彫や線刻で画像を表わしたもの。前漢あるいは三国時代以降のものもある。壁画を恒久的に遺存する目的がその起源と考えられる。画題は酒宴,歌舞,車馬行列,狩猟,楼閣,樹木など現世的なものや,歴史的説話,勧戒を表わすもの,西王母,東王父,雨師,風伯,雷公,日月星辰など道教的神仙思想に取材するものなどがある。漢代の絵画,風俗習慣を知る資料として貴重である。山東省の武氏祠孝堂山遺跡,四川省の石闕などのものが著名。同種のものに画像 塼 (せん) があり,朝鮮,日本にも伝来し,宮殿,仏閣建築などに用いられた。

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