佐野川市松(読み)さのがわいちまつ

精選版 日本国語大辞典 「佐野川市松」の意味・読み・例文・類語

さのがわ‐いちまつさのがは‥【佐野川市松】

  1. 歌舞伎俳優。o名盛府。初世。京都に武士の子として生まれ、四条南側芝居の出方甚蔵の養子となる。幼名甚之助。子役から若衆形に転じ、寛保元年(一七四一)「高野心中」の粂之介の役で用いた衣装から市松模様流行容貌にすぐれ、若女形としても活躍。享保七~宝暦一二年(一七二二‐六二

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「佐野川市松」の意味・わかりやすい解説

佐野川市松
さのがわいちまつ

歌舞伎(かぶき)俳優。3世まであるが、初世が有名。

服部幸雄

初世

(1722―62)武士の子として京都・伏見(ふしみ)に生まれる。1733年(享保18)京都の芝居に子役として初舞台。若衆方(わかしゅがた)として41年(寛保1)2月江戸に下り、『高野(こうや)心中』の粂之介(くめのすけ)に扮(ふん)し、衣装に用いた石畳の模様が「市松染」の名で流行したのは有名である。54年(宝暦4)若女方(わかおんながた)に転じ、62年には江戸の若女方の代表者の地位まで昇ったが、その年に没した。美貌(びぼう)の持ち主で、とくに世話物の役が得意であった。

[服部幸雄]

2世

(1747―85)8世市村羽左衛門(うざえもん)の弟子。若衆方、若女方から、のち実悪(じつあく)に転じた。3世は初世市川荒五郎(あらごろう)の前名。

[服部幸雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「佐野川市松」の意味・わかりやすい解説

佐野川市松 (さのがわいちまつ)
生没年:1722-62(享保7-宝暦12)

歌舞伎役者。宝暦期(1751-64)を代表する二枚目役者。12歳の初舞台のときからその愛らしさが人気となり,41歳で没するまで,美貌の若衆方,女方役者として活躍した。代表的な舞台は,1741年(寛保1)江戸中村座で演じた《高野心中》の粂之介で,その衣装に用いた石畳(いしだたみ)の模様は〈市松模様〉として今日に残る。〈市松(いちま)人形〉の名も顔を似せて作ったことに由来する。浮世絵の好画材であり,女性の人気には絶大なものがあった。私生活も派手で,種々の艶聞を残したが,壮年に至らず惜しまれつつ没した。2世,3世もあるが初世が最も著名。
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朝日日本歴史人物事典 「佐野川市松」の解説

佐野川市松

没年:宝暦12.11.12(1762.12.26)
生年:享保7(1722)
江戸中期の若衆形,女形の歌舞伎役者。俳名盛府。山城国伏見(京都市)の武士の子として生まれ,京四条南側芝居の出方(木戸から入る客を案内したり,無料入場者を取り締まる係)甚蔵の養子となる。若女形の佐野川万菊の門弟。はじめ子役で人気を得ていたが元文4(1739)年より若衆形となった。寛保1(1741)年江戸へ下り,「高野心中」での小姓粂之助役が大当たりし,このときの衣裳の石畳模様は市松模様の名で流行した。その容姿の美しさから浮世絵によく描かれている。宝暦4(1754)年から若女形へ転向,江戸において若女形の首位となり,これからと期待されたときに没した。2代目,3代目があるが,初代ほどの活躍はなかった。<参考文献>『歌舞伎評判記集成』2期

(北川博子)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「佐野川市松」の解説

佐野川市松(初代) さのがわ-いちまつ

1722-1762 江戸時代中期の歌舞伎役者。
享保(きょうほう)7年生まれ。佐野川万菊の門人。寛保(かんぽう)元年江戸中村座の「高野心中」で粂之介(くめのすけ)に扮した衣装の石畳模様が市松模様の名で流行した。若衆方,若女方をかね,荒事にもすぐれた。宝暦12年11月12日死去。41歳。山城(京都府)出身。俳名は盛府。屋号は新万屋,芳屋。

佐野川市松(2代) さのがわ-いちまつ

1747-1785 江戸時代中期の歌舞伎役者。
延享4年生まれ。8代市村羽左衛門(うざえもん)の門弟。明和4年(1767)2代を襲名。若衆方と若女方をかね,江戸で名声をあげた。天明4年初名の坂東(ばんどう)愛蔵を名のった。天明5年8月26日死去。39歳。京都出身。俳名は東花,盛府,青布。屋号は新万屋。別名に松本山十郎。

佐野川市松(3代) さのがわ-いちまつ

市川荒五郎(いちかわ-あらごろう)(初代)

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世界大百科事典(旧版)内の佐野川市松の言及

【市松模様】より

…中世の装束の表袴(うえのはかま)の〈窠に霰(かにあられ)〉もこれであり,下って近世になると帯や着物の模様として織にも染にもさかんに用いられた。市松という名称は,1741年(寛保1)佐野川市松という俳優が江戸中村座の芝居で《高野心中》の小姓粂之助の役にこの石畳模様の袴を用いて人気を博し,大いに流行したことから起こったといわれる。【山辺 知行】。…

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