布引滝(読み)ぬのびきのたき

精選版 日本国語大辞典 「布引滝」の意味・読み・例文・類語

ぬのびき‐の‐たき【布引滝】

  1. [ 一 ] 神戸市中央区葺合町を流れる生田上流の滝。雄滝とその下流雌滝とがあり、その間に夫婦滝鼓ケ滝がある。
    1. [初出の実例]「布引のたきのもとにて、人々あつまりて哥よみける時によめる」(出典:古今和歌集(905‐914)雑上・九二三・詞書)
  2. [ 二 ] 浄瑠璃源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)」の通称

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日本歴史地名大系 「布引滝」の解説

布引滝
ぬのびきのたき

生田川が山間部から沖積低地へ流れ出るまでの間の布引渓谷にあり、上流からおん滝・夫婦めおと滝・つづみガ滝・めん滝の四つの滝からなる。雄滝は高さ四五メートル、雄大で名瀑として知られる。雌滝は高さ二一メートル。「能因歌枕」「和歌初学抄」「五代集歌枕」などに歌枕として載せられ多くの歌に詠まれた。「古今集」第一七に、宇多上皇が七月七日に「ぬのびきのたき御覧ぜむとて」訪れた折、橘長盛が「ぬしなくてさらせるぬのをたなばたにわが心とやけふはかさまし」と詠じている。「千載集」には土御門顕房の「水の色のただしら雲とみゆるかなたれさらしけんぬのびきのたき」が載る。「伊勢物語」八七段に衛府の督某が「「いざ、この山のかみにありといふ布引の滝見にのぼらん」といひて、のぼりて見るに、その滝、物よりこと也、長さ二十丈、広さ五丈許なる石のおもて、白絹に岩をつゝめらんやうになむありける」と記される。

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改訂新版 世界大百科事典 「布引滝」の意味・わかりやすい解説

布引滝 (ぬのびきのたき)

神戸市中央区,新幹線新神戸駅のすぐ北にある名瀑。六甲山地摩耶(まや)山に発する生田川が平地に出るところにかかる。雄滝(高さ43m),雌滝(19m)のほか夫婦滝,鼓ヶ滝があって,白布を敷くように見えたのでこの名があるといわれ,古来文芸の題材にしばしば取り上げられ,歌枕ともなった。1900年上流に布引貯水池が建設されたため,昔日の壮観はみられない。
執筆者: 《伊勢物語》には〈長さ二十丈,広さ五丈許(ばかり)なる石のおもて,白絹に岩をつつめらんやうになむありける〉と描写されている。《新古今集》巻十七の〈ひさかたの天つ少女(おとめ)が夏衣雲居にさらす布引の滝〉という藤原有家の歌など詠歌は多く,貴紳遊覧もたびたびであった。《栄華物語》〈布引の滝〉の巻に1076年(承保3)秋の関白師実の遊覧の記事があり,時の歌8首を添える。また,《増鏡》にも記され,歌舞伎には《源平布引滝》がある。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「布引滝」の意味・わかりやすい解説

布引滝
ぬのびきのたき

神戸市中西部、中央区の六甲(ろっこう)山地にある滝。生田(いくた)川の中流にあたる布引谷の花崗(かこう)岩にかかる雄滝(おんたき)、夫婦(めおと)滝、鼓(つつみ)ヶ滝、雌(めん)滝などの総称。雄滝は43メートル、雌滝は14メートルに及び、岩面を流れ落ちるさまが白布のようにみえることから布引の名があるという。『伊勢(いせ)物語』に「白絹に岩を包めたらむやうになむありける」とあり、また古来多くの歌に詠まれている。旧生田川筋には布引町の名が残っている。東海道・山陽新幹線新神戸駅の北方約1キロメートル。

[藤岡ひろ子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「布引滝」の意味・わかりやすい解説

布引滝
ぬのびきのたき

兵庫県神戸市中央区の山手,生田川上流部にある滝。上流部より雄滝 (高さ 43m) ,夫婦滝 (6m) ,雌滝 (19m) などが続き,平安の昔から歌や文学で親しまれた名瀑。山陽新幹線新神戸駅より徒歩約 20分の地。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「布引滝」の解説

布引滝
(通称)
ぬのびきのたき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
源平布引滝
初演
宝暦7.1(江戸・森田座)

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