神戸市の東部を流れ大阪湾に注ぐ川。源を灘区、
文禄三年(一五九四)太閤検地実施に際して
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
叙事伝説。摂津国(大阪府、兵庫県)の女に求婚する2人の男、菟原(うない)と血沼(ちぬ)がいた。女の親はいずれとも決めかねて、生田川の水鳥を射とめたほうに嫁すと約す。2人はそれぞれ水鳥の頭と尾を射たので、女は思い悩み「住みわびぬわが身なげてん津の国の生田の川は名のみなりけり」と詠んで投身する。2人の男は後を追い、それぞれ女の足と手を捕らえて死んだ。人々は女の塚の左右に2人の男の塚を築いて、その塚を処女塚(おとめづか)とよんだ。この和歌説話は『大和(やまと)物語』147段に記されているものだが、古くは『万葉集』巻9に葦屋(あしや)の菟原処女に血沼壮士(おとこ)・菟原壮士が求婚し争った伝説として収載される。『万葉集』にはこの種の塚を訪ねて葬られた処女を悼む歌がいくつか詠まれていて、葛飾(かつしか)の真間(まま)の手児奈(てこな)(巻3、巻9)や桜児(さくらこ)や鬘児(かつらこ)(巻16)も同種の死に遭遇した処女の伝説である。当代の歌人はそれらの伝説に特別の感興を催し挽歌(ばんか)に詠んだのだが、これらの処女は特定の女性というより、その土地土地にあった産土(うぶすな)に仕える巫女(みこ)の伝承である。巫女が神聖な生活を送り、その神の女としての伝承がいくつも重なり合って一つの伝説が定着したものであろう。後代の謡曲『求塚(もとめづか)』はこの伝説で、森鴎外(おうがい)も戯曲『生田川』として劇化し、1910年(明治43)自由劇場により有楽座で上演された。夏目漱石(そうせき)『草枕(くさまくら)』にも登場する。
[渡邊昭五]
…兵庫県六甲山南麓菟原(うはら)の地(現,芦屋市周辺)に住んでいたという美少女。万葉歌人高橋虫麻呂,田辺福麻呂(さきまろ),大伴家持に歌われ(巻九,十九),後世《大和物語》147段,謡曲《求塚(もとめづか)》,森鷗外の戯曲《生田川》にもなった妻争い伝説の女主人公である。慕い寄る男たちの中でとりわけ執心なのが菟原壮士(うないおとこ)と和泉国の智弩壮士(ちぬおとこ)だった。…
…観阿弥の《求塚》は,菟原処女が2人の男を死なせた科(とが)により地獄におちたという設定のもとに,古来の説話を再構成した傑作で,前場に歌枕の生田の小野,生田の森を点出し,後場では地獄の責め苦を克明に描く。近代では,森鷗外の《生田川》(1910)も,これを題材としている。【宮田 和美】。…
※「生田川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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