改訂新版 世界大百科事典 「希少性の原理」の意味・わかりやすい解説
希少性の原理 (きしょうせいのげんり)
principle of scarcity
経済学において希少性とは,生産資源やそれから生産される財やサービスの利用可能量が,人間の欲望をみたすためには不足している状態をいう。すべての資源や財およびサービスの経済的価値はそれらの希少性に依存している,という考え方がかなり古くから述べられていたが,それをG.カッセルは希少性の原理と名づけた。生産資源そして財やサービスが希少であるかぎり,選択と排除という問題が生じる。限られた資源をどのような目的に,どのような方法で使用するかという選択が必要になり,また希少な資源(希少資源)を使って生産された財やサービスを一定のルールに従って分配し,分配を受けた人以外の人が勝手に使用することを排除する必要が生じる。これらがそれぞれ資源配分と所得分配の問題であり,経済学の中心的な研究課題をなす。
希少性の原理を,そして資源配分や所得分配の問題を実際に解決する方法はいくつかある。代表的なものの一つは市場機構であって,市場で価格に反応して行動する需要者と供給者とによって,これを解決しようというものである。そこにおいては,資源や財およびサービスの希少性はその価格に反映される。実際,希少でない資源(自由財),たとえば空気の価格はゼロである。このように,希少性が価格に反映されているとき,さまざまな財やサービスを,どのように生産資源を使用して,どれだけ生産すればよいかは,それらの価格が示している。その他の解決方法としては,たとえば中央管理当局によって決定しようというものがある。
執筆者:丸山 茂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報