川の営む侵食、運搬、堆積(たいせき)作用の間に力学的なつり合い、すなわち平衡の状態が成立している川。平滑河川、グレード河川ともいう。平衡の状態としては静的平衡と動的平衡とが考えられる。前者は、流水のエネルギーと河床の抵抗とが力学的につり合っている状態で、侵食も堆積もおこらない。後者は、一定距離の区間内で侵食量に見合うだけの堆積量があり、流入してきた土砂に匹敵するだけの量が下流側に流出している状態で、土砂収支の面からつり合いがとれていて、結果的には侵食も堆積もおこらなかった場合と同じことになる。
川の縦断面は上流側で急傾斜、下流側になるほど緩傾斜となり、全体としては上に向かってくぼんだ曲線で、ほぼ指数曲線で近似できる。河床の縦断面の各部分は、上流側から供給される土砂を下流側へ運ぶのに必要な流速を維持すると考えると、下流側の縦断勾配(こうばい)は、流送される土砂粒子の細粒化に伴い、粒径に対応して緩勾配となるという説明が成り立つ。アメリカの地形学者マッキンJoseph Hoover Mackin(1905―1968)は、長い年月にわたって、流域から供給された荷重の運搬に必要なだけの流速を生ずるように、勾配が微妙に調節されている川を平衡河川と定義した。そして、なんらかの条件が変化すると、その変化の影響を吸収するように平衡の関係を変化させていくのが平衡河川の外見上の特徴であると述べている。マッキン流に解釈すれば、大部分の川はこのような平衡状態の達成を目ざしているという意味で平衡河川とよぶことができる。現実の川で、河床が侵食も堆積も受けない完全な均衡状態が全川にわたって成立することは考えられないし、静的平衡状態が一時的に成立したとしても、外的な条件の変化によって長続きはしないであろう。灌漑(かんがい)水路ではこれに近い状態が要求されることから、流路の安定を図るレジーム理論や安定河道の理論が生まれたが、諸外国では流路の横断面の安定が主眼で、安定流路の縦断形状理論は日本で発達した。
アメリカの地形学者W・M・デービスは、動的平衡の概念を彼の侵食輪廻(りんね)(地形輪廻)説のなかに取り入れ、壮年期の河谷の地形的特徴としたが、マッキンの定義によれば、平衡状態は定常状態を目ざした川の自己調整作用の現れであるから、平衡河川が壮年期のみの特徴とはならない。定常状態は壮年期以外にも出現するからである。レオポルドLuna Bergere Leopold(1915―2006)とウォルマンMarkley Gordon Wolman(1924―2010)の理論的研究では、川は定常状態を目ざして流水の位置エネルギー消費速度を最小にすべく調整すると考えられている。
[髙山茂美]
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…三角州上の河川の水位が潮の干満によって上下することは,洪水の際にとくに重要な意味をもつとともに,近年のように臨海部における工業化・都市化に伴う排水によって河川が汚濁されると,このような感潮域の河川水の浄化は難しく,対策が注目される。
[平衡河川]
砂礫を運搬する流水が河床に堆積する小石を入れ替えることはあっても,運搬作用のみが行われ,河床の浸食や堆積が進まず,河床変化はほとんど起こらない状態の河川を平衡河川という。平衡状態に近づいた河川の縦断面が示す曲線形は上流に急で下流に緩やかな放物線またはサイクロイド曲線をなすようになり,これを平衡曲線という。…
※「平衡河川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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