建築などの部材に圧力が加えられたときに、限度を超えると急激に変形が増大する現象。建物の柱は、上部の重さ(圧縮力)を支えている。比較的細長い柱が、ある限度以上の圧縮力を受けると、急にたわみ(変形)が増加し、いわゆる、はらみ出し(面が押し出されてふくれること)が生じる。この現象を座屈という(分岐座屈、 )。座屈現象の特徴は、座屈点を境に変形の型が変化することと、柱では座屈の瞬間に上部の重さを支える能力が急激に低下することである。柱や梁(はり)の構面に耐震要素としてブレース(筋かい)を用いる例も多いが、これにも同様な現象が生じる。柱やブレースの座屈のしやすさは、断面の形と長さ(細長比(ほそながひ))に依存する。細長いものほど座屈は生じやすい。柱の座屈のほかに板の座屈がある。折り曲げた板(折板(せっぱん))の頂部に力を加えると、ある限度の力で折板の頂点が逆側に移る(飛移り座屈、 )。このときは、逆側に反り返るときに破損がなければ、それ以後も力の増加に耐えられる。最後の例は、缶をつぶすときに生じる座屈である。薄いアルミ板でつくられた缶は、ある限度を超えた圧縮力で、くびれが生じ急激につぶれる(屈服座屈、 )。貯油タンクなどの大規模構造物にもこの座屈現象が生じ、「象の足」とよばれる局所的変形が生じる。この現象の生じやすさは、板の厚さと形状(幅厚比(はばあつひ))に依存する。
構造物において、これらの座屈現象は急激な耐力低下や変形の増大を伴うことが多いので、設計上周到な考慮を必要とする。
[小堀鐸二・金山弘雄]
材料に加わる応力が材料本来の強度に達する以前に材料が大きく変形する現象。もっとも一般的なのはまっすぐな細長い棒状の材料(このような形態のものを長柱という)を軸方向に圧縮していく場合の座屈で,最初は圧縮に抵抗しているが,圧縮力を増していくと,突然横方向に大きく曲がり出す。これは初めのうちは長柱内部には単純な圧縮応力とひずみが生じてつり合いを保っていたのが,圧縮がある値(座屈荷重)に達すると,このつり合い状態が崩れるために起こるもので,長柱の変形とともに曲げモーメントが発生し,座屈による変形をさらに助長してついには破壊に至る。
座屈は,長柱の長さと断面二次半径との比およびヤング率が小さいほど起こりやすい。ただし,長柱の両端の支持状態によって大きく異なり,両端を回転可能なピン状態にした場合の座屈荷重は,固定端の場合の数分の1になってしまう。座屈現象は,このような長柱だけでなく細長い断面のはりに曲げモーメントが働くときや薄い板の面内に圧縮力やせん断力が作用した場合にも生じ,建築,車両,船舶,航空機など長柱・薄板構造を使用する場合の座屈問題はとくに重要である。
なお,長柱の座屈に関してはL.オイラーの理論があり,断面の応力度が比例限度内にある場合の座屈荷重を与えるオイラーの長柱式が導かれている。
執筆者:岩崎 正義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…第3は軸方向力と曲げ変形との相関で,理論的には第2の原因の特別の場合であるが,実際問題としてはきわめて重要である。軸方向圧縮力が大きくなると,部材の変形様式がそれ以前とは急激に変化する座屈(曲げ座屈)と呼ばれる現象が発生するが,線形解析では軸方向力による曲げ変形の増減を無視している。線形性を仮定するのは,構造解析を連立一次方程式によって行うことができ,また解の重ね合せが可能になるという実用上きわめて大きな利点が生ずるためで,非線形挙動を扱う構造力学では,反復計算による逐次近似法を用いるか,あるいは微小増分について線形性を仮定する増分解析法を用いて解析を行う。…
※「座屈」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新