日本大百科全書(ニッポニカ) 「筋かい」の意味・わかりやすい解説
筋かい
すじかい / 筋違
架構式構造の軸組において、2本の柱とその上下をつなぐ水平材(土台、胴差、梁(はり)など)で囲まれた長方形壁体の中に対角線状に通す部材。トラスと同様、軸組は四辺形の集合とするよりも筋かいを入れ三角形の集合とするほうが、いわゆる「三角形不変の原理」によって変形しにくくなり、水平荷重(地震力、風圧)に対して強固な建物をつくる。洋風木造建築では古くから多用され、ハーフティンバーhalftimber形式(イギリス中世におこった木造住宅の一形式。日本の真壁(しんかべ)に似る構造をもつ)の建物では筋かいが意匠の要素とさえなっている。日本で筋かいを使用した最古の遺構としては法隆寺舎利殿(1219)があり、『春日権現霊験記(かすがごんげんれいげんき)』絵巻にもその使用例がみられるが、洋風建築ほどは一般化しなかった。これは、日本の木造建築に真壁造が多く、壁体に筋かいを入れることが困難であったためと思われる。現在は耐震上の見地から、木造建築であっても壁体に一定割合で筋かいを入れることが建築基準法により義務づけられている。
筋かいには圧縮力に抵抗する圧縮筋かいと、その逆の引張り筋かいがある。前者は座屈をおこすおそれもあるから柱とほぼ同寸の断面を要するが、後者はそのおそれがないので比較的細い材料でよく、鉄骨構造ではしばしば鋼索(ワイヤ)をたすき掛けに用いることがある。いずれにせよ筋かいは構造材であるから、端部を他の部材と補強鉄物(かなもの)などを使って強固に取り付け、間柱などの他の部材と交差するときは、筋かいを2本の材で通すことを優先し、他の部材を切断しなければならない。
[山田幸一]