精選版 日本国語大辞典「庵・菴・廬」の解説
いおり いほり【庵・菴・廬】
〘名〙 (「いほ」の動詞形「いほる」が名詞化したもの)
[一] 草や木で屋根や壁を造った、小さな、粗末な仮小屋。いお。
(イ) 農作業のため田畑のそばに造る小屋、葬儀のための臨時の小屋など。
※万葉(8C後)一〇・二二三五「秋田刈る旅の廬入(いほり)に時雨(しぐれ)降りわが袖濡れぬほす人なしに」
(ロ) 旅行中に泊まるために造る粗末な小屋。旅の宿り。軍隊などの宿営。
(ハ) 隠者、僧などの住む粗末な仮の家。あん。
※源氏(1001‐14頃)若紫「おなじ柴(しば)のいほりなれど」
(ニ) 小さな家、粗末な家。自分の家を謙遜してもいう。
※枕(10C終)八二「草のいほりをたれかたづねんと書きつけて」
[二] (一)に似た形をしているもの。また、(一)の屋根をかたどったようなもの。
① 能楽の造物(つくりもの)の一つ。草庵になぞらえた四角形枠形のもの。とびらはつくが、屋根がない。「安達原」「梅枝」などの曲で用いる。
② 「いおりかんばん(庵看板)」の略。
※常磐津・三世相錦繍文章(おその六三)(1855)三「新入(しんいり)の役者ぢゃ故、番付の肩の所へ庵(イホリ)に出て居りますわいの」
③ 刀の背の棟の構造の一種。三角に作った形状が庵の屋根に似たことによる。
④ 紋所の名。庵、三頭(みつがしら)合わせ庵、花形庵(はながたいおり)、利久庵などがある。

⑤ 「ひとがしら(人頭)②」の古称。
※落葉集(1598)小玉篇「𠆢 いほり」
[語誌]→「いお(庵)」の語誌。
いお いほ【庵・菴・廬】
〘名〙
※万葉(8C後)一〇・二二五〇「春霞たなびく田居に廬(いほ)つきて秋田刈るまで思はしむらく」
② 自分の家を謙遜していう語。いおり。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報