弘明集(読み)ぐみょうしゅう(その他表記)Hóng míng jí

改訂新版 世界大百科事典 「弘明集」の意味・わかりやすい解説

弘明集 (ぐみょうしゅう)
Hóng míng jí

中国,梁の僧祐(そうゆう)(445-518)が仏教を〈弘め明らかにする〉上で有益な先人たちの論文書簡など57編を14巻に編集した書。ついで唐の道宣(596-667)はそれ以外の唐初までの文章273編あまりを集め,〈弘明を総べ広め〉て《広弘明集》30巻を作った。この二つの書は仏教伝来以後の中国における仏教理解と受容過程,儒教・道教との対立交渉,国家との関係を知る上での基本文献である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「弘明集」の意味・わかりやすい解説

弘明集
ぐみょうしゅう

中国、梁(りょう)代の仏教論集。14巻。漢訳仏典目録『出三蔵記集』の編者でもある梁の僧祐(そうゆう)(445―518)の編集。中国伝入以後の初期の仏教は、儒教の盛行する中国においてつねに夷狄(いてき)の教として蔑視(べっし)され、排斥されることが多かった。仏教が中国人の宗教として定着するまでには、儒教、道教を含めて、三教交渉に関する論著が多く公表された。僧祐は「道は人によって(ひろ)められ、教は文によってらかにされる」との立場により、護法の目的をもって代表的な議論を集録したのが本書である。初期中国仏教の解明には不可欠の貴重な資料集である。

[牧田諦亮]

『牧田諦亮編『弘明集研究』上中下(1973~75・京都大学人文科学研究所)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「弘明集」の意味・わかりやすい解説

弘明集
ぐみょうしゅう
Hong-ming-ji

中国,梁の僧祐の撰。 14巻。東晋以来の儒教,仏教,道教の主要な人物の間でかわされた論争を集録した書で,いわば当時の中国における仏教排撃運動に対し,仏教者側から,仏教の重要性を説き示したもの。したがって,仏教の哲学思想が,儒教,道教など中国独自の思想の用いる言葉をもって解釈され,説明されている。論争の記録としても興味深い

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