張大千(読み)ちょうだいせん(その他表記)Zhang Daqian

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「張大千」の意味・わかりやすい解説

張大千
ちょうだいせん
Zhang Daqian

[生]光緒25 (1899).4.1. 四川,内江
[没]1983.4.2. 台北
中国の画家,収集家。Chang Ta-ch'ienとも記す。20世紀の中国人芸術家のなかで特に国際的な名声が高い。幼少期に家族から絵画の道を勧められた。1917年,トラの絵で有名な画家で兄の張善孖に同行して京都に留学し,染色を学んだ。2年後に上海へ移り,当時の著名な書画家,曾熙と李瑞清に師事して伝統的な絵画を学ぶ。初期の画風は,唐寅陳鴻寿石濤遺民画家手本にした。上海で成功したのち,1920年代後半には北部に活動の場を広げ,北京の文化人たちと積極的に交わるようになった。この頃に始めた北京の有名な画家溥心畲との共同制作は「南張北溥」として知られるようになり,1930年代に制作された 2人の共同作品の作者名には今日もこの呼び名が用いられている。1940年から画家仲間とともに敦煌莫高窟,敦煌楡林窟で仏教壁画の模写に取り組んだ。日中戦争の間には伝統的な時代の人物画や古い時代の巨大山水画を熱心に研究,古典的作品から着想を得たハスの花の絵で特に知られるようになった。1949年の政治情勢の暗転を機に,1950年代初めに中国を離れ,アルゼンチン,ブラジルアメリカ合衆国など各地を転々とした。1956年にフランスのニースでパブロ・ピカソと面会した際は,東西芸術家の出会いとして大きな話題になった。1950年代後半から目を患ったが,視力が低下するにつれて溌彩と呼ばれる様式の成熟度を高めていく。自身は,この様式は一つには唐代の画家,王墨の溌墨技法にならったものとしているが,当時アメリカで注目を集めていた抽象表現主義の技法や,伝統的画法との決別に関係しているとの見方も多い。1978年には台湾に移住。国立故宮博物院の隣に建つ当時の住居摩耶精舎は,今日では張大千記念館になっている。(→中国美術

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