当分(読み)とうぶん

精選版 日本国語大辞典 「当分」の意味・読み・例文・類語

とう‐ぶん タウ‥【当分】

[1] 〘名〙
① 仏語。天台宗で、跨節(かせつ)に対して用いる術語。蔵・通・別・円の四教のそれぞれの立場で解釈される側面をいう。
※日蓮遺文‐守護国家論(1259)「天台宗学者於爾前当分得、於自義猶不当分得道」 〔法華玄義‐第一下〕
② その人に与えられたもの。その人相応のもの。
※十善法語(1775)一「人間当分のくらゐを尊重すべし」
③ ある物事を数人でひきうける場合の自分の担当分。
日葡辞書(1603‐04)「Tǒbun(タウブン)ツカマツッタ〈訳〉私に割り当てられたものは実行した」
④ そのときどき。あることが起こったその当座。さしあたりのところ。
※浮世草子・好色盛衰記(1688)二「二親同心なきをわびしき住家をうたてく、当(タウ)分の難を助けたく」
※火の柱(1904)〈木下尚江〉三「奥様のお亡りなされた当分は」
⑤ 最近。近々。ちかごろ。
※浮世草子・世間胸算用(1692)三「古掛は捨て当分(トウブン)のさし引それをたがひに了簡して」
※歌舞伎・三賀荘曾我島台(1821)三立「そりゃマア、いつからの事ぢゃ、や。当分(タウブン)の事かいの」
乾坤弁説(1656)貞「日輪十二時一回昼夜分ちぬれば、当分にわかつ時は、昼の間は六時、夜の間も又六時になるが故に」
[2] 〘副〙 ここしばらく。あとしばらく。また、今この場合。現在のところ。さしあたり。
※俳諧・西鶴大句数(1677)一「いひ合せ当分ちょっと道成寺 笛ふき鞁たいこもちまで」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉六「当分(タウブン)外泊をすることが出来んから」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「当分」の意味・読み・例文・類語

とう‐ぶん〔タウ‐〕【当分】

あることが起こった、その当座。時分。ころ。
「当時クリミヤ戦争の―ではあるし」〈福沢福翁自伝
(副詞的にも用いる)現在のところ。ここしばらく。さしあたり。「当分は間に合う」「当分練習を休む」
割り当てられた分。担当分。
「―ツカマツッタ」〈日葡
当座[用法]
[類語]当面当座しばらく差し向き差し当たりひとまずさしずめとりあえずまずもって

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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