当分(読み)トウブン

デジタル大辞泉 「当分」の意味・読み・例文・類語

とう‐ぶん〔タウ‐〕【当分】

あることが起こった、その当座時分。ころ。
「当時クリミヤ戦争の―ではあるし」〈福沢福翁自伝
副詞的にも用いる)現在のところ。ここしばらく。さしあたり。「当分は間に合う」「当分練習を休む」
割り当てられた分。担当分。
「―ツカマツッタ」〈日葡
当座[用法]
[類語]当面当座しばらく差し向き差し当たりひとまずさしずめとりあえずまずもって

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「当分」の意味・読み・例文・類語

とう‐ぶんタウ‥【当分】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 仏語。天台宗で、跨節(かせつ)に対して用いる術語。蔵・通・別・円の四教のそれぞれの立場で解釈される側面をいう。
      1. [初出の実例]「天台宗学者於爾前当分得、於自義猶不当分得道」(出典:日蓮遺文‐守護国家論(1259))
      2. [その他の文献]〔法華玄義‐第一下〕
    2. その人に与えられたもの。その人相応のもの。
      1. [初出の実例]「人間当分のくらゐを尊重すべし」(出典:十善法語(1775)一)
    3. ある物事を数人でひきうける場合の自分の担当分。
      1. [初出の実例]「Tǒbun(タウブン)ツカマツッタ〈訳〉私に割り当てられたものは実行した」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    4. そのときどき。あることが起こったその当座。さしあたりのところ。
      1. [初出の実例]「二親同心なきをわびしき住家をうたてく、当(タウ)分の難を助けたく」(出典:浮世草子・好色盛衰記(1688)二)
      2. 「奥様のお亡りなされた当分は」(出典:火の柱(1904)〈木下尚江〉三)
    5. 最近。近々。ちかごろ。
      1. [初出の実例]「古掛は捨て当分(トウブン)のさし引それをたがひに了簡して」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)三)
      2. 「そりゃマア、いつからの事ぢゃ、や。当分(タウブン)の事かいの」(出典:歌舞伎・三賀荘曾我島台(1821)三立)
    6. とうぶん(等分)
      1. [初出の実例]「日輪の十二時の一回を昼夜に分ちぬれば、当分にわかつ時は、昼の間は六時、夜の間も又六時になるが故に」(出典:乾坤弁説(1656)貞)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 ここしばらく。あとしばらく。また、今この場合。現在のところ。さしあたり。
    1. [初出の実例]「いひ合せ当分ちょっと道成寺 笛ふき鞁たいこもちまで」(出典:俳諧・西鶴大句数(1677)一)
    2. 「当分(タウブン)外泊をすることが出来んから」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉六)

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