第107代に数えられる天皇。在位1586-1611年。諱(いみな)は和仁,のち周仁(かたひと)。正親町(おおぎまち)天皇の皇子誠仁(さねひと)親王の第1子。母は新上東門院勧修寺晴子。正親町天皇のあとをうけて即位し,第3皇子政仁親王(後水尾天皇)に譲位。在位中は,豊臣秀吉の皇室奉戴の政策により朝廷の尊厳が一応回復をみる一方,近世封建制のなかに組み込まれていく過程でもあった。秀吉の奏請により1588年(天正16)4月聚楽第に行幸。そのとき,秀吉より京中の銀地子5500両余が御料として献じられた。これらの禁裏御料の献納によりようやく皇室経済が安定するに至り,1601年(慶長6)徳川家康は1万石の御料所を献じた。学問を好み,舟橋秀賢をして四書を進講させ,また廷臣に《伊勢物語》《源氏物語》などを講義。能書家であり,和歌をよくしたが,文化史上の不朽の業績は勅版の刊行で,《勧学文》《錦繡段》《日本書紀神代巻》《古文孝経》《大学》《職原抄》など広範囲に及び,慶長勅版として近世の文芸復興に大きく貢献した。皇弟智仁親王に譲位の意向があったが,家康の反対でならず,さらに09年の猪熊事件に対する家康の処置が天皇の意にかなわず,しだいに幕府との関係に円滑を欠き,憤慨のあまりついに11年譲位。日記に《後陽成天皇宸記》(慶長6年1月)がある。
執筆者:橋本 政宣
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第107代天皇(在位1586~1611)。名は和仁(たかひと)、のち周仁(かたひと)。正親町(おおぎまち)天皇の皇子誠仁(さねひと)親王の第1王子。母は新上東門院藤原晴子。1586年(天正14)正親町天皇の養子となり即位。88年、関白(かんぱく)豊臣(とよとみ)秀吉から支度料を贈られ聚楽第(じゅらくだい)に行幸、諸大名から忠誠の誓いを受けた。しかしそれは形式的で、実際は天皇と並んだ関白に諸大名が忠誠を要求されたものであった。92年天皇は宸翰(しんかん)を送り、秀吉の朝鮮渡海を思いとどまらせた。舟橋秀賢(ひでかた)から漢学を、細川幽斎(ゆうさい)から和学を学ぶなど、和漢の学問的教養に造詣(ぞうけい)が深く、慶長(けいちょう)勅版を刊行させた。江戸幕府成立後、政仁(ことひと)親王(のちに後水尾(ごみずのお)天皇)を擁立しようとする徳川家康と対立し、退位。陵墓は京都の深草北陵。
[北島万次]
1571.12.15~1617.8.26
在位1586.11.7~1611.3.27
正親町(おおぎまち)天皇の皇子誠仁(さねひと)親王の第1王子。名ははじめ和仁(かずひと),のち周仁(かたひと)。母は勧修寺晴右(はれみぎ)の女新上東門院晴子。幼称若宮。父の急死により皇嗣となる。豊臣秀吉の政権下で即位し,1588年(天正16)4月聚楽第(じゅらくてい)に行幸。秀吉没後はしばしば譲位の意向を示し,徳川家康の朝廷干渉を容易にした。木製活字を作らせ,和漢の古典数種を刊行(慶長勅版)。
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…1607年(慶長12)2月,左少弁猪熊教利が官女との密通により勅勘を受けて出奔し,ついで09年7月には参議烏丸光広以下大炊御門頼国,花山院忠長,飛鳥井雅賢,難波宗勝,徳大寺宗久,松木宗信らの若公家衆が前年来典侍広橋氏など5人と遊興にふけり,密通していたことが発覚した。後陽成天皇は激怒し,彼らを極刑に処すべく,その意向を幕府に伝えた。徳川家康は叡慮次第の旨を奏したが,宮廷内部に寛典論も出て,その処分は家康に一任された。…
…1592年(文禄1)より1606年(慶長11)までの日次記(ひなみき)と1585年(天正13)の〈羽柴秀吉関白宣下記〉以下の別記11点がある。欠年が多く記事も概して簡潔ではあるが,天正~慶長期の政治および文芸上の好史料で,1610年後陽成天皇が江戸幕府の種々の拘束によるふんまんから譲位に及ぶ状況を記した部分などはとくに重要である。自筆原本19冊,8巻,4紙が陽明文庫に所蔵されている。…
…禅宗美術
[安土桃山時代]
安土桃山時代の文化が豪華絢爛の語を冠せられるように,書の世界においても室町時代の沈滞した空気を排した生新の気風が吹き込まれた。宸翰として後陽成天皇は祖父正親町天皇の薫育によって雄大な書風をもち,とくに大字を得意としたので,社寺の勅額に筆を染めたものが少なくない。その堂々たる風格は桃山時代にふさわしい。…
※「後陽成天皇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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