御蓋山(読み)みかさやま

日本歴史地名大系 「御蓋山」の解説

御蓋山(三笠山)
みかさやま

春日山の西峰で、蓋(笠)に似ていることからその名がある。本宮ほんぐうの峯、あるいは浮雲うきぐもの峯とも称された。西麓に春日大社山頂本宮神社(浮雲宮)鎮座標高二八三メートル。初見は「続日本紀」養老元年(七一七)二月一日条に「遣唐使祠神祇於盖山之南」とあるもの。天平勝宝八年(七五六)の東大寺山堺四至図(正倉院蔵)には今日の春日大社の前身であった「神地」と、春日山にあたる「南北度山峯」との間に、円錐形の美しい山を描いて「御山」と注記し、また同図端書にも「三笠山」と記している。東大寺堺勅定文(正倉院文書)には「御笠山口」を一つの山堺とする。「東大寺要録」によると、東大寺創建の頃この辺りが山金里やまかねのさととよばれ、御笠山には阿倍氏の社が創設されていたことが知られるが、その所在は未詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「御蓋山」の意味・わかりやすい解説

御蓋山 (みかさやま)

奈良県奈良市東部,春日大社背後の山。標高297m。三笠山,御笠山とも書き,春日山の前山で,この山自体を春日山ともいう。笠を伏せたような山容をしていることからこの名がある。三笠火山群に属し,安山岩噴出,のちに浸食をうけた二次的な山である。春日社の神域として狩猟伐採が禁じられたため原始林(特天)におおわれ,ナギの林は有名阿倍仲麻呂の歌〈天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも〉(《古今集》巻九)によって知られるが,《万葉集》にも〈高座(たかくら)の御笠の山〉〈大君の御笠の山〉とうたわれている。歌枕としても著名で,多くの詠歌がある。なお,すぐ北にある若草山も三笠山と俗称されたことから混同が生じた。
春日山
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御蓋山」の意味・わかりやすい解説

御蓋山
みかさやま

三笠山とも書く。奈良市の市街地東部にある山。標高 283m。山体はおもに三笠山安山岩から成り,春日断層崖北端に噴出した若草火山岩丘群に属する。東に連なる花山 (狭義の春日山) ,芳山とともに春日山と総称され,原生林でおおわれる。奈良公園の一部で,奈良時代から歌にも詠まれ,文学的にも有名。北方に続く若草山を俗に三笠山と呼んでいるため,よく混同される。

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世界大百科事典(旧版)内の御蓋山の言及

【春日山】より

…奈良公園の東方にあって〈青垣〉をなす。前山をなすのが御蓋(みかさ)山(293m)で,この山を春日山と呼び(国土地理院地形図),その奥にある花山(498m。時には芳山(ほやま)を含めることもある)を春日奥山として区別したり,あるいはその全体を春日山と呼んだりもする。…

※「御蓋山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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