酒を入れ,杯につぐ器。節会(せちえ)その他の供宴に用いる。銚子(ちようし)や提子(ひさげ)はつぎ口のある鍋形に,柄か鉉(つる)をつけたものであるが,瓶子はまるい壺形の胴に細首の口をつけたいわゆる徳利形をしたもので,その首を鳳(おおとり)形にしたものを〈胡瓶(こへい)〉といった。金銅,白銅,銀,錫製があり,またこれらに毛彫で文様をほどこしたもの,あるいは青磁や白磁,漆塗のものもあった。形は高さ約30cm前後から60cmに及ぶものもあり,7升入りの〈陶器鳥頸平瓶〉などというものもあった。いずれも胴が太く,首が比較的細くくびれているのを特徴とし,開いた口を薄様(うすよう)で包んだり,蝶花(ちようはな)形をつけることもあった。後世は一般に銚子や提子または徳利が用いられ,瓶子は祝儀,あるいは神酒(みき)をもるのに用いられている。〈飾瓶子〉は木に箔(はく)を押し,鳳凰(ほうおう)などを彩色でえがき,酒を入れず,口を絹布でつつみ,一対にして並べておくものである。
執筆者:日野西 資孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
古くは「へいじ」と読み、酒器の一種。現代の徳利(とくり)と同じ用途をもつが、形は、狭い口のついた細長い頸(くび)に、膨らんだ下部をつけたのと、狭い口に膨らんだ胴部をつけ、その下部を細くしたのとがある。古代の出土品に瓶(へい)とよぶ須恵器(すえき)があり、奈良時代にペルシアの影響を受けた唐から舶来した胡瓶(こへい)があり、いずれも瓶の上部が鳥首になっているのが特徴で、金銅製、陶製で三彩を施釉(せゆう)したもの、ガラス製がみられる。平安時代には木製挽物(ひきもの)仕上げで白鑞(びゃくろう)(錫(すず)と鉛の合金)蒔絵(まきえ)で桐竹鳳凰(きりたけほうおう)を描く瓶子(重文)が、奈良市・手向山(たむけやま)神社に残る。中世には木地挽物に朱漆や黒漆を塗り、漆絵を描いた瓶子が盛んにつくられた。しかし、鎌倉後半期に瀬戸中心に焼成、施釉の陶器が盛んとなり、その製品で岐阜県・白山(はくさん)神社瓶子は1312年(正和1)に奉納した銘文が刻まれており有名である。神前に一対を奉納するのが通常である。
[郷家忠臣]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…古くカメとよばれた(《和名抄》)のは,ふくらんだ胴,あるいは丈高の胴のうえでいったんすぼまってから口にいたる形の〈瓶〉であって,むしろ壺に含まれる形の液体容器である。酒をいれて人に供するための瓶子(へいし)もその一種であり,現在の瓶(びん)が古称のカメの実体を伝えている。古くは,ミカ(記紀),モタヒ(《和名抄》),ユカ,サラケなどとよばれていた液体容器(おもに酒の)が,〈甕〉と表記されカメとよばれるようになったのは,中世以降のことである。…
… 現在では徳利を銚子と呼ぶことも多いが,徳利と銚子とはもともと別物であった。平安時代には酒を注ぐ器として,〈さしなべ〉と瓶子(へいし)とが使われた。〈さしなべ〉は鍋に注ぎ口をつけたもので,《和名抄》では銚子の字をあてているが,やがてこれが弦(つる)をつけたものと長柄をつけたものとに分化する。…
※「瓶子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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