心と体の老化度チェック(読み)こころとからだのろうかどちぇっく

食の医学館 「心と体の老化度チェック」の解説

こころとからだのろうかどちぇっく【心と体の老化度チェック】

《心の老化度チェック》
〈気分が沈み込みがちだ〉
 老年期に入ると、退職などにより、これまでの生活環境が大きく変化します。加えて、配偶者や友人の死、容姿の衰えなどからくる喪失感、また病気の心配や経済的な不安を抱きやすく、ただでさえ抑うつ状態になりがちです。
 うつ病にかかるケースも少なくありません。実際、老年期の精神疾患なかで、うつ病はもっとも多くみられるものの1つで、脳卒中(のうそっちゅう)糖尿病などの病気や、骨折などのけががきっかけとなって、うつ病になることもあります。
 もともと高齢者は、若いときにくらべて気分転換や気持ちの切り替えがうまくできず、自分の健康状態や体調善し悪しなど、関心も外より内に向きがちです。
 新聞を読むのがおっくうになったなど、外界や新しいことへの関心が薄れてきたら注意信号です。
〈「昔と性格がかわった」と人からいわれる〉
 年をとると性格が変化することがあります。
 生来の性格がより強調される場合もありますが、内気だった人が攻撃的になったり、のんきだった人が神経質になるなど正反対の性格にかわることもしばしばです。また、全体に角がとれ、円満な性格にかわる場合もあります。
 ほかに、一般的な老人気質として、考えや行動が自己中心的、保守的、猜疑心(さいぎしん)が強い、などの傾向がみられます。
〈物忘れがひどくなった〉
 脳の神経細胞は、一度こわれると再生しません。20歳代をピークに減少しはじめ、前頭葉(ぜんとうよう)をのぞいて1日2~3万個が死滅していきます。そして80歳までに、約37%が失われるといわれています。これが、物忘れや認知症の原因となるわけです。
 とくに知的能力のなかでも、計算力、記憶力、空間認知力や推理力の低下が目立ち、転居入院など、生活環境の変化がきっかけになって、こうした知的機能が著しく低下することがよくあります。
《体の老化度チェック》
〈かぜをひきやすく、治りにくい〉
 年をとると、細胞の数が減少し、その働きも衰えてきます。当然ながら免疫細胞の力も低下しているので、ちょっとした体調のくずれから、かぜなどの感染症にかかってしまいがちです。
 しかも、若いころにくらべて体力も落ちているので、一度病気にかかるとなかなか治らないのも特徴です。かぜをこじらせて肺炎を併発するなど、回復が遅れて重症になるケースがよくあります。
〈よく眠れない、食欲がなく顔色も悪い〉
 私たちの体の中は、つねに一定に保たれています。たとえば外気温が変化しても、私たちの体温はつねに36度前後に保たれています。これをホメオスターシス(恒常性維持(こうじょうせいいじ))といいます。
 ホメオスターシスは、内分泌系(ないぶんぴつけい)(ホルモン)、神経系(自律神経)、免疫系(感染防御)のコントロールのもと、肺、肝臓、腎臓(じんぞう)など複数の臓器の働きによって維持されています。
 しかし高齢になると、この働きが低下し、ホメオスターシスがくずれがちになります。そうなると、夜、よく眠れない、食欲がない、顔色が悪い、ちょっとしたことで機嫌が悪くなるなどの全身状態の悪化がみられるようになります。
〈のどのかわきをあまり感じない〉
 脱水症状を起こしやすくなるのも老化の特徴です。
 高齢になると、体の中に蓄えられる水分量も少なくなります。しかも、感覚が鈍くなっているため、のどのかわきを感じることがなく、水分補給がなされません。このため、脱水状態をまねいてしまうのです。
 脱水状態になると、体内を循環する血液量が減り、脳を流れる血液量も減少して、意識障害を起こすことがあります。また、腎臓へ流れる血液量が減ると、体外に排出されるはずの老廃物(ろうはいぶつ)が、血液中でふえてしまい、体に悪影響をおよぼします。
 ですから、のどがかわいていなくても、よくお茶を飲むようにするなど、意識的に水分補給を心がけたほうがいいでしょう。
〈慢性の病気(老年病)にかかっている〉
 高齢になると、さまざまな体の機能の低下により、完全に治すことがむずかしい慢性の病気にかかりやすくなります(「老化(加齢)するということ」参照)。
〈かかっている病気が複数ある〉
 また、複数の病気を併発しやすくなります。たとえば、高血圧と糖尿病を合併しているうえ、胃腸障害も起こしている、といった状態になりやすいのが特徴です。
〈症状の現れ方が一般的ではない〉
 高齢者の場合、病気にかかっても、症状の現れ方や経過が、一般とは異なることがあります。
 たとえば肺炎なのに高熱にならずに微熱が続き、本人も周囲もたいしたことはないと放置してしまうケースがしばしばみられます。
 高齢者は体の反応が鈍くなっているため、このように症状の現れ方が弱かったり、明確な症状として現れなかったりすることがあります。したがって、わずかな体調の変化でも、あなどらずに医師を受診するなど、大事をとることがたいせつです。
〈薬を飲むと副作用がでやすい〉
 年をとっても臓器の機能が成人とかわらない人もいれば、著しく低下している人もいます。このように、高齢者では個人差が大きく、薬に対する反応も一般とは異なってきます。
 たとえば、腎臓機能の衰えにより、薬の成分が尿中から排出されず、体内に蓄積されて思わぬ副作用が起こることがあります。
 ですから、体調が悪いからといって、自分の判断で複数の市販薬を服用しないよう気をつけたいものです。

出典 小学館食の医学館について 情報

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