老化するということ(読み)ろうかするということ

食の医学館 「老化するということ」の解説

ろうかするということ【老化(加齢)するということ】

《心の老化と体の老化》
 年をとると、心身ともにさまざまな変化が起こってきます。成熟期以降に起こるこの心身の変化のことを「老化(加齢)」と呼んでいます。老化には生理的老化と病的老化があります。
〈生理的老化〉
 「生理的老化」というのは、多かれ少なかれ、だれにでもかならず起こる心身の変化をいいます。
 たとえば年をとると、白髪(しらが)や脱毛が広がり、顔にはシミやシワができるようになります。脳や筋肉、骨の重量が減ることから体重が落ち、腰も曲がって身長が低くなります。
 また、老眼(ろうがん)、難聴(なんちょう)、免疫力(めんえきりょく)や消化吸収力の低下など、生理機能にも衰えがみられるようになります。これらはすべて生理的老化です。
〈病的老化〉
 一方、「病的老化」というのは、だれにもかならず起こるとはかぎらない変化のことをいいます。たとえば、血液の流れが悪くなって起こる高血圧や動脈硬化、あるいは骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や認知症などは病的老化に含まれます。
 老化自体は病気ではありませんが、年をとると体全体の機能が低下するため、病気にかかるリスクも高まります。生理的老化だけが進行している人は極めてまれで、多くの人の場合、病的老化も同時に進行します。
〈これだけある「老年病」〉
 高齢者に多くみられる慢性病には次のようなものがあります。
 高齢者の慢性病は、体のあらゆるところで現れる可能性があります。しかも、複数の病気を併発していることも少なくありません。
 これらの慢性病は「老年病」とも呼ばれています。
・脳/認知症、うつ状態、うつ病
・神経/脳血管疾患(脳卒中)、パーキンソン病、変形性脊髄症
・呼吸器/慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支ぜんそく、肺結核、肺線維症、肺炎
・循環器/高血圧、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、不整脈、閉塞性動脈硬化症
・消化器/逆流性食道炎、カンジダ性食道炎、慢性胃炎、便秘、慢性肝炎、虚血性腸疾患(虚血性大腸炎など)、大腸ポリープ
泌尿器腎硬化症慢性腎不全、尿路感染症(膀胱炎など)、前立腺肥大症
・ホルモン、代謝/糖尿病、甲状腺機能低下症、脂質異常症、高尿酸血症
・運動器/骨粗鬆症、変形性関節症、骨折、関節炎
・血液/貧血、播種性血管内凝固症候群、多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫
・免疫/リウマチ
・皮膚/老人性皮膚瘙痒症
・女性/老人性腟炎、子宮体がん、卵巣がん
・口腔/口内炎、歯の脱落
・感覚器/老人性白内障、老人性難聴、歯周病
《老化のメカニズム》
 では、老化はなぜ、どのようにして起こるのでしょうか。老化のメカニズムについては、大きく2つの説があります。
〈老化プログラム説〉
 1つは「老化プログラム説」というものです。
 これは、生命の設計図である遺伝子DNAに、老化のプログラムがあらかじめ組み込まれており、そのプログラムにしたがって老化が進行するという説です。その根拠となっているのは、細胞の寿命です。
 遺伝子の末端部分には、細胞分裂の回数をカウントしている部分があって、細胞は決められた回数だけ分裂すると、それ以上の分裂を停止します。
 つまり細胞には寿命があり、それが私たちの寿命にも関係しているのではないかというのです。
 現在、細胞や遺伝子といったミクロレベルでの研究が精力的にすすめられており、実際に老化や寿命に関係していると考えられる遺伝子も、次々に特定されつつあります。
〈エラー蓄積説〉
 もう1つは「エラー蓄積説」です。
 たとえば放射線や紫外線、化学物質などによってDNAの遺伝情報が傷つけられ、正常な遺伝子が突然変異を起こしたり、体を構成しているたんぱく質の構造に少しずつエラーが蓄積されて、老化をまねくという考え方です。
 エラーが起こる原因としては、そのほかに、活性酸素によって遺伝子や細胞が傷つけられる、たんぱく質の分子と分子を結合させる架け橋が異常に増加して、組織や細胞のはたらきを低下させる、などの説があります。
 老化プログラム説とエラー蓄積説のどちらが正しいか、まだ明確な答えはでていませんが、両者がともに関係して老化が進行すると考える専門家も少なくありません。
《老化と活性酸素》
 エラー蓄積説のところで、活性酸素という言葉がでてきました。最近、一般の人でも、この言葉をよく耳にすることと思います。
 具体的に、活性酸素は私たちの体にどのような弊害をもたらすのでしょうか。
〈体をサビつかせる活性酸素〉
 老化と活性酸素の関係をもう少しくわしくみてみましょう。
 活性酸素はその名のとおり、反応が活性化された酸素で、体を構成するたんぱく質や脂質などとすぐに結合して酸化させる性質があります。
 その結果、たんぱく質や脂質の構造が変化して、本来の働きを低下させたり、異常な働きをするようになり、がんなどの病気を引き起こしたり、老化を促進してしまうのです。
 しかし、活性酸素は私たちの体にとって有益な面もあります。体内に侵入しようとする細菌やウイルスを排除したり、有害な化学物質を無害化する働きがあるのです。
 ですから、活性酸素の発生を、体に必要な量だけに抑えておくことがポイントになります。
〈抗酸化作用のある食品を〉
 活性酸素は、私たちが呼吸や食事をするたびに体内で発生しています。また、紫外線、タバコの煙、クルマの排気ガスなども活性酸素を生みだす原因になります。
 というと心配になってきますが、じつは私たちの体には、必要以上に大量の活性酸素が発生しないよう、活性酸素を取り除く酵素が備わっています。しかし、いくつかの研究によって、それだけではまだ足りないこともわかっています。
 老化対策として、ビタミンCやEなどの抗酸化作用のある成分を含んだ食品がすすめられるわけは、そこにあるのです。

出典 小学館食の医学館について 情報

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