志筑忠雄(読み)しづきただお

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

志筑忠雄(しづきただお)
しづきただお
(1760―1806)

江戸中期の蘭学(らんがく)者。通称忠次郎、柳圃(りゅうほ)と号す。長崎の資産家中野氏の家に生まれる。幼時長崎通詞(つうじ)志筑家の養子となり、8代目を継いで1776年(安永5)稽古(けいこ)通詞となったが、翌1777年18歳で病身のため辞職した。その後、本木良永(もときよしなが)について天文学、オランダ語学の研究に専心し、『暦象(れきしょう)新書』をはじめ多くのオランダ書の訳述や著述に従った。『求力論』『八円儀』『日蝕(にっしょく)絵算』『三角提要秘算』『火器発法伝』『和蘭詞品考』『鎖国論』『二国会盟録』『四維図説』などがある。主著である『暦象新書』はイギリス人ジョン・ケールJohn Keil(1671―1721)の著書のオランダ語訳書を解訳したもので、このなかで地動説を述べ、付録の「混沌(こんとん)分判図説」では「カント‐ラプラスの星雲説」に比して劣らぬ独創的見解が述べられている。また地動説を肯定しながらも天動説を排除しない立場をとっている。『求力論』は同じくケールの著書の訳述で、力学を説いたものである。これらは訳書ではあるが、志筑自身の見解も挿入されていて、単なるヨーロッパの自然科学説の紹介だけでなく、科学思想史的にみても重要な意義をもつもので、博学な一面をうかがうことができる。
 弟子には蘭学者馬場佐十郎や吉雄権之助(よしおごんのすけ)(1785―1831)、大槻玄幹(おおつきげんかん)(1785―1838)、天文・数学に当時独歩と称せられた末次忠助(独笑)(1765―1838)らの俊才がある。[渡辺敏夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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