地理学者,矧川(しんせん)と号する。三河国(現,愛知県岡崎市)に生まれる。1878年東京大学予備門に入学,80年北海道に渡り,84年札幌農学校卒業。86年ダーウィンをまねて海軍練習船筑波に便乗,オーストラリア,サモア,ハワイを歴訪,帰国後《南洋時事》(1887)を著して注目された。88年三宅雪嶺らと政教社を結成,雑誌《日本人》を創刊,国粋保存主義を強調した。94年日清戦争勃発の年に《日本風景論》を刊行,同じ年に出た内村鑑三の《地理学考》とともに,明治の二大地理書と呼ばれることがある。1905年日露国境線画定作業のため樺太(サハリン)に渡ったのをはじめ,1910年と22年に世界を旅行,その足跡はほとんど全大陸に及び,当時としては比類のない大旅行家でもあった。農商務省山林局長,外務参事官をへて衆議院議員にも選ばれた。《世界山水図説》(1911)など多くの地理的著作を通じ,終始地理学者の道を歩んだ。郷里岡崎市に世界各地から集めた資材で小屋〈四松庵〉を建て,その近くに墓がある。著作は《志賀重昂全集》8巻(1927-29)に収められている。
執筆者:辻田 右左男 《日本風景論》では,日本の地形の特質や美しさについて述べ,とくに〈登山の気風を興作すべし〉という章では,イギリスの登山技術を紹介し登山を盛んにするよう説いた。この書は,W.ウェストンの《日本アルプスの登山と探検》とともに日本の近代登山に大きな影響を与え,日本山岳会創立の一つの契機ともなった。1911年ウェストンに次いで日本山岳会名誉会員に推された。
執筆者:徳久 球雄
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明治・大正時代の地理学者。『日本風景論』(1894年初版)によって知られる地理評論家、雑誌『日本人』を通して日本精神を鼓舞した経世家である。三河(みかわ)国(愛知県)岡崎で藩士の子として出生。矧川(しんせん)と号した。東大予備門を経て1884年(明治17)札幌農学校を卒業。アイヌを案内に頼んで北海道の辺地を探検し、1886年オセアニア各地を視察して『南洋時事』(1887)を著した。世界各地の調査を行い、郷里岡崎には世界各地の木材で建てた記念館がある。『日本風景論』では、日本が水蒸気の多いこと、流水の侵食が激しいこと、火山が多いことなどをあげて風景の分析と鑑賞の方法を説いている。また、アジア大陸地質図の大成を主張し、東京地学協会草創にも加わって地理学の研究と普及に力を入れた。日本ラインの命名者でもある。
[木内信藏]
『志賀富士男編『志賀重昂全集』全8巻(1927~1929・同書刊行会/復刻版・1995・日本図書センター)』▽『『日本風景論』上下(講談社学術文庫)』
明治〜昭和期の地理学者,政治家 衆院議員。
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(佐々博雄)
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1863.11.15~1927.4.6
明治・大正期の思想家・評論家・地理学者。三河国岡崎藩士の家に生まれる。札幌農学校卒。軍艦に便乗してオセアニア各地を巡り,1887年(明治20)「南洋時事」を出版。翌年三宅雪嶺(せつれい)らと政教社を創立,雑誌「日本人」の主筆として「国粋保存旨義」(国粋主義)を唱え,政府の欧化政策と藩閥政治を批判。初期議会では対外硬派として活動。96年進歩党結成に参画し,第2次松方内閣のとき農商務省山林局長,98年第1次大隈内閣のとき外務省勅任参事官。憲政本党をへて1900年立憲政友会に加入,衆議院議員当選2回。この間,日本各地を旅行し「日本風景論」(1894刊)を刊行して名声を博した。明治末期に政界を退き,世界各地を周遊して数多くの紀行文・評論を発表した。
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…また二葉亭四迷や徳冨蘆花などによる文学の革新をも実現させた。これに対抗した三宅雪嶺,志賀重昂らの政教社は,雑誌《日本人》によって陸羯南の新聞《日本》とともに〈国民主義〉を唱えた。《日本人》は高島炭鉱の坑夫の労働条件の過酷さを訴えて,いわゆるルポルタージュの先駆となり,《日本》は正岡子規の俳句再興の舞台となって国民的なひろがりをもつ短詩型文芸慣習を定位するなど,日本の近代文学に貢献した。…
…政教社発行の雑誌。東京大学出身の三宅雪嶺,井上円了らと札幌農学校出身の志賀重昂,今外三郎らの若手知識人によって1888年4月創刊された。その主張は,藩閥政府の推進する欧化政策に反対し,〈国粋〉を〈保存〉しようとするナショナリズムにあった。…
…志賀重昂の代表作の一つで,1894年(明治27)10月発行。以後増訂を重ねて1903年には第15版が出たほど愛読された。…
※「志賀重昂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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