思入(読み)おもいいれ

精選版 日本国語大辞典 「思入」の意味・読み・例文・類語

おもい‐いれ おもひ‥【思入】

[1] 〘名〙
① 人や物事に深く思いを寄せること。また、その人や物事。執心
日葡辞書(1603‐04)「ゼンノ ミチニ vomoiireno(ヲモイイレノ) アル ヒト」
② 考えを巡らすこと。また、その考え。思案。もくろみ。みこみ。おもいれ。
※舞正語磨(1658)上「しかるにあの仕舞は左りざまにて、ことやうに見ゆ。いはれざる思ひ入なり」
③ 人から受ける信頼。人望。人気。
※評判記・剥野老(1662)山本勘太郎「心ばへよし。人のすく思ひ入おほし」
④ 人の表情や風情。特に、演劇で、俳優が、ある場面での心理状態を、無言のうちに動作や姿態、表情で表わすこと。また、その演技。歌舞伎では、「ト思入れ」のようにト書きにし、思入れを演ずる箇所に〇印を用いる。おもいれ。
※評判記・野郎虫(1660)竹中小太夫「雪のうちのもうそうのおもひ入あり」
※歌舞伎・男伊達初買曾我(1753)一「控へさっしゃれト反(そり)打って思入れする。ト梶原、富樫気味の悪き思入れして控へる」
⑤ (④から転じて) 口に出さないで、ある意味を持たせた、やや気どった動作や表情。おもいれ。
※滑稽本・客者評判記(1811)上「思はずきせるを取落して膝に焼痕(やけど)もギックリならで恟(びっく)りの〇(オモヒイレ)を、亭主が見付て」
[2] 〘副〙 思いきり。思うぞんぶん。じゅうぶんに。おもいれ。
※歌舞伎・彩入御伽草おつま八郎兵衛)(1808)小平次内の場「ドレ、思(オモ)ひ入(イ)れ汲んで来ようか」

おも‐いれ【思入】

[1] 〘名〙
※談義本・成仙玉一口玄談(1785)四「意(こころ)をつくし思(オモ)ひれを尽して為すゆへ」
洒落本・売花新駅(1777)駅路風景「あすこは新造かひでちとおもいれがある」
※評判記・野良立役舞台大鏡(1687)竹中辰之助「小哥よくうたわるるゆへいよいよおも入ふかし」
※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)口明「歌に成(なり)お初いろいろおも入(いれ)して、向ふより助右衛門出る」
※洒落本・遊子方言(1770)発端「通り者は、たばこののみやうに、おもいれありて」
⑥ さきざきの見込みをつけること。特に、相場で、先の見込みを立てて売買すること。〔模範新語通語大辞典(1919)〕
[2] 〘副〙 (「に」を伴って用いることもある) 思う存分。思いきり。おもいり。
※洒落本・郭中奇譚(1769)弄花巵言「にしきの夜ぎ、おもいれおしつけて行」

おぼし‐い・る【思入】

[1] 〘自ラ四〙 (「おもいいる(思入)」の尊敬語) 深く心に思いこみなさる。いちずに思いつめなさる。
※宇津保(970‐999頃)内侍督「せめて御心にふかくこの北方をおぼしいりおはします」
※あさぢが露(13C後)「そののちは、ただうき身とのみおぼしいるに」
[2] 〘他ラ下二〙 (「おもいいれる(思入)」の尊敬語)
① 物事を深く心におとめになる。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「なににかおぼしいるる。あなをさな」
② (「入る」をかけことば的に使って) ある範囲内に含めてお考えになる。
※源氏(1001‐14頃)柏木「人数にはおぼしいれざりけめど、いはけなうはべし時より深く頼み申す心の侍しを」

おもい‐い・る おもひ‥【思入】

[1] 〘自ラ五(四)〙
① 心に深く思いこむ。ひたすら考えこむ。いちずに思いつめる。
※伊勢物語(10C前)五九「昔、男、京をいかが思ひけん、東山(ひむがしやま)に住まむと思ひいりて」
② (「入る」をかけことば的に使って) 思いつつ、中にはいる。心に思いを抱きながら入り込む。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「今は限りにおもひいりにし山ぢを、今更に、思ひ給へかへらんそらもはづかしう侍るべき」
[2] 〘他ラ下二〙 ⇒おもいいれる(思入)

おもい‐い・れる おもひ‥【思入】

〘他ラ下一〙 おもひい・る 〘他ラ下二〙
① 心に、深く入れる。心にとめる。深く思いをかける。
※蜻蛉(974頃)中「この幼き人、『入りね入りね』といふけしきを見れば、物を深く思ひいれさせじとなるべし」
② (「入れる」をかけことばのように使って) 思って、中に入れる。ある範囲の中に含めて考える。
※源氏(1001‐14頃)横笛「この世にてかずにおもひいれぬことも、かの今はのとぢめに、一念のうらめしきも」

おもい‐いり おもひ‥【思入】

〘副〙 思いきり。思うぞんぶん。おもいいれ。おもいれ。
※人情本・恩愛二葉草(1834)初「疾(と)くに私(わし)が駈出して、思(オモ)ひ入(イ)り恨みも言ひまする」

おも‐いり【思入】

〘副〙 思う存分。思いきり。おもいれ。
※人情本・春色江戸紫(1864‐68頃)二「忌々しいからおも入(イリ)惚気(のろけ)て遣(や)ったは」

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