翻訳|sex ratio
同一種の雌個体の数と雄個体の数の比をいう。雌個体(1または100)に対する雄個体の割合,あるいは全個体数に対する雄個体数の百分率で表す。植物でも雌雄異株のものでは性比が問題になり,スイバは性比が大きく雌にかたよっているので有名である(約1:0.5)。動物では一般に雌雄で死亡率に差があるため性比は生活史の諸段階で異なる。受精時の性比を一次性比,出生時のものを二次性比,その後のものを三次性比という場合がある。鳥類や哺乳類のように性染色体により性が決定する場合には,性比はほぼ1:1となるが,かたよる場合も少なくない。たとえば,膜翅(まくし)類(ハチやアリ類)の昆虫では受精卵から倍数体の雌が,未受精卵からは半数体の雄が孵化(ふか)する。同様に,アリマキやギンブナなどでは単為生殖により雌のみが生じる。性の決定が環境に左右される場合は性比がかたよる。たとえば,海産のボネリムシBonelliaの幼生は単独では雌に発生するが,雌が存在すると吻(ふん)に付着して雄になる。サンゴ礁魚のホンソメワケベラは1匹の雄と数匹の雌と数匹の未成魚が群れを作っているが,雄がいなくなると優位の雌が性転換して雄になる。線形動物のメリミスの幼生は昆虫に寄生しているが,宿主あたりの卵数が多くなると性比が雄にかたよる。爬虫類では孵卵温度で性比が影響されるものがある。カメでは温度が高くなると雌が増し,トカゲやワニでは逆に,温度が高くなると雄にかたよる。カミツキガメではある温度範囲で雄が生じ,それよりも高くても低くても雌になることが知られている。
執筆者:能村 哲郎
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雌雄異体の生物において、同一種内の雌雄の個体数の比をいう。性比は雌個体1または100に対する雄個体の割合で示すことが多い。性染色体による性の決定が行われるならば、理論的には1対1、または、100対100になり、雌雄はほぼ同数となる。しかし、ヒトの場合は平均して女児よりも男児のほうが多く生まれる。このように、性比が偏ることがある。その原因のうち、単為生殖で性の一方のみが生まれる場合(ミツバチ、アリマキ、ミジンコ、ワムシ類など)がもっとも性比が偏る。また、性染色体がXY型のとき、二型の精子に運動能力の差がみられたり、減数分裂後に一方の精子が淘汰(とうた)されたり、性染色体の不分離が生じると、性比が偏る。ZW型の場合、卵の成熟分裂の過程で、一方の性染色体が極体放出時に放棄されやすい場合に性比が偏る。ショウジョウバエでも雌ばかり生まれてくる例がある。これには二つの原因があるが、その一因としては性決定に関連した突然変異遺伝子があり、その遺伝子をもつ雄では、減数分裂中にY染色体がほとんど退化し精子のほとんどがX型となるからである。もう一つの原因としてスピロヘータがあげられる。この微生物は、雌から卵を通して次の世代に伝えられる。スピロヘータをもった雌と正常雄とが交雑し受精卵をもつと、XY型の受精卵が選択的に発生途中でスピロヘータにより殺される。こうして、胚(はい)はほとんどが雌となる。性比の偏る原因として、致死遺伝子の関与する場合もある。
[高橋純夫]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…成熟分裂の結果生じた卵には3A+Xの1種しかできないが,精子には3A+Xと3A+Yの2種を生じ,3A+Xの精子で受精がおこると雌を生じ,3A+Yの精子が受精にあずかると雄を生ずる。この受精はほぼランダムにおこるので,生じてくる雌と雄の比率(これを性比という)は1:1になる。 性染色体の上に座位を占める遺伝子の遺伝様式は,常染色体の上にあるそれらとは異なる遺伝様式をとり,これを伴性遺伝という。…
※「性比」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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