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致死遺伝子 ちしいでんしlethal gene

翻訳|lethal gene

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

致死遺伝子
ちしいでんし
lethal gene

致死因子ともいう。これを受継ぐと,動物は胎内で死ぬか (致死) ,または幼児のうちに死ぬ (亜致死) 遺伝子。通常の遺伝子に比べて,これは劣性の遺伝子が多いので,親のほうの表現型としては正常である。ハツカネズミの「黄色」遺伝子Yは致死遺伝子で,正常の黄色ネズミを交配させると YYが4分の1の確率で生れ,胎内で死亡する。このほか,ショウジョウバエでも,致死遺伝子が知られている。

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デジタル大辞泉の解説

ちし‐いでんし〔‐ヰデンシ〕【致死遺伝子】

成体になるまでの一定の時期に死をもたらす遺伝子。優性の致死遺伝子をもつ個体はすべて死ぬが、劣性ではホモ(同型)の場合のみ致死作用を示す。蚕・ネズミ・ショウジョウバエなどで知られる。致死因子

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百科事典マイペディアの解説

致死遺伝子【ちしいでんし】

発生の途中で,その生物を死なせてしまう遺伝子。たとえば突然変異によって生じるショウジョウバエの翅(はね)がまくれ上がった形質(Curly形質,Cyと略記)は,正常型に対して優性だが,その遺伝子CyをホモにもつCy/Cy個体は孵化(ふか)の時に致死作用のため死んでしまう。

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大辞林 第三版の解説

ちしいでんし【致死遺伝子】

個体発生のある時期に死を引き起こす遺伝子。優性のものと劣性のものとがある。ハツカネズミの黄色、トウモロコシで葉緑素を欠くものなどは劣性致死遺伝子の支配を受けている。致死因子。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

致死遺伝子
ちしいでんし
lethal gene

生物の正常な発育が抑えられ、成熟体になるまでにその個体を死に至らせるような突然変異の遺伝子をいう。多くは正常な発生や発育に必要な酵素やタンパク質の合成を支配する遺伝子の突然変異によっておこる。この遺伝子の致死作用が、これをもつすべての個体におこる場合には完全致死complete lethalといい、その一部の個体のみに致死作用が現れる場合を不完全致死semilethalという。
 致死遺伝子が作用を現す時期は、それぞれの遺伝子によって決まっていて、生殖細胞や配偶子で作用を現すものや、受精後発生のある特定の時期に作用を現すものもある。性染色体上の致死遺伝子は伴性遺伝をするし、正常対立遺伝子とのヘテロ(異型)の個体で、致死作用が現れる優性致死dominant lethalと、致死作用が現れない劣性致死recessive lethalがある。劣性致死では、致死遺伝子がホモ(同型)になると致死作用が現れるが、ヘテロの状態でも、その個体の表現型に種々の異常を示すものもある。マウスの無尾taillessホモの個体の致死作用は、胚(はい)発生の桑実(そうじつ)(卵が卵割を繰り返し、多数の割球が集まってクワの実のようになる時期の胚で胞胚になる前の胚)期に現れるし、黄色致死yellow lethalのホモの個体の致死作用は、胞胚期に現れる。ショウジョウバエでは、このような致死遺伝子の作用は、発生の種々の時期に現れ、早いものでは卵の初期発生で、中胚葉や内胚葉の分化が悪く、中腸などの形成される前に死ぬし、遅いものでは幼虫にまでなるか、気管に消化管付近でつくられるガスが入らずに死ぬものもある。このように致死の時期には、突然変異によって差異がみられるが、いずれも致死の前には胚の発生や生存に必要な、組織や器官の形成が遅れたり、細胞が一時に死ぬような致死作用が現れたりする。また、このような形態的な異常の前に、タンパク質の合成や酵素活性の異常が生じているものと思われる。ヒトのサラセミア(地中海貧血)と名づけられる貧血症は、赤血球の血色素形成が異常になるが、ホモでは発育の途中で死に、ヘテロでは症状が軽い。生物の自然集団のなかには、致死遺伝子がしばしば高い頻度で保持されている。これらは劣性致死遺伝子で、しかもそれぞれその遺伝子座を異にしているため致死作用が現れず、ヘテロの状態で保持され子孫に伝えられる。カナリアの毛冠性、白色冠、カイコの腎臓形卵(じんぞうけいらん)(卵が腎臓形をし、胚子は中胚葉系組織が欠如しており、劣性致死遺伝子により支配される)・無半月紋蚕(むはんげつもんさん)(幼虫の皮膚にある斑紋(はんもん)のうち腹部第2環節の半月紋および第5環節の星紋が欠如しており、劣性致死遺伝子により支配される)が知られ、植物では、オオマツヨイグサやキンギョソウ、マツバボタン、トウモロコシなどの葉緑素(クロロフィル)の形成異常を伴う致死遺伝子が知られている。[黒田行昭]
『芦田譲治他編『遺伝と変異』(1958・共立出版) ▽黒田行昭編著『21世紀への遺伝学1 基礎遺伝学』(1995・裳華房)』

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世界大百科事典内の致死遺伝子の言及

【遺伝】より


[量的形質の遺伝]
 個々の遺伝子は多数のヌクレオチド対からなりたっているので,膨大な数の対立遺伝子が存在する。これらの中には,個体の生存そのものを損なう致死遺伝子もあれば,生命には別条ないまでも表現型に大きな変化をもたらす主働遺伝子,その影響の小さい微働遺伝子,さらには表現型から元の遺伝子とまったく区別できないものまで,いろいろのものが含まれる。対立遺伝子が主働遺伝子である場合,ヘテロ接合体の子孫は表現型に関して不連続なグループに分かれ,3:1とか9:3:3:1とかの分離比を容易に確かめることができる。…

※「致死遺伝子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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