デジタルカメラに似た仕組みで主に昼間に地上を撮影する光学衛星と、電波を発して地上からの反射を捉えて夜間や悪天候でも観測可能なレーダー衛星がある。現在はレーダー5機と光学3機を運用中だが、設計寿命を超えているものもあり、政府は更新を急いでいる。2種類の衛星がそれぞれ2機あれば、地上の特定地点を1日に少なくとも1回は撮影できるとされる。
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軍事施設や騒乱状況などを宇宙空間から監視し情報を収集することを目的にした人工衛星。1998年(平成10)8月の北朝鮮によるミサイル発射疑惑をきっかけに、日本が独自に周辺国の軍事情報を得るための衛星を導入する議論が本格化した。政府は同年11月、導入方針を閣議で正式に決定した。内閣官房に「情報衛星推進委員会」を設置し、計画、運用を官邸主導で国産化を軸に検討を進め、国内メーカーも強い関心を示した。日本は宇宙開発を進めるにあたって、1969年(昭和44)に衆議院で「平和目的に限る」ことを決議しているが、1985年の政府見解で「利用が一般化している衛星は自衛隊の利用が認められる」と、民間の衛星画像情報を防衛目的に利用できるようにしており、独自の情報衛星の保有でいっそう自衛隊の情報収集能力が高まるとされている。しかし、衛星情報分野は事実上、アメリカが主導権を握っており、開発と運用にあたって日米間の摩擦を危惧(きぐ)する声もある。2003年3月、日本で初めての情報収集衛星を搭載したH-ⅡAロケット5号機が宇宙開発事業団(現、宇宙航空研究開発機構)によって打ち上げられた。搭載されたのは、約1メートルの分解能をもつ光学センサーを備えた光学衛星1基、夜間や雨天でも撮影可能な合成開口レーダー衛星1基の計2基である。続いて2003年11月に、H-ⅡA6号機によって情報収集衛星2基が打ち上げられたが、6号機は固体ロケットブースターの分離に失敗、衛星の軌道投入は失敗した。その後、2006年9月H-ⅡA10号機により1基、2007年2月H-ⅡA12号機により2基、2009年11月H-ⅡA16号機により1基の情報収集衛星が打ち上げられ、運用されている。なお、宇宙開発事業団は2003年10月、統合により宇宙航空研究開発機構となり、打ち上げは宇宙航空研究開発機構に引き継がれている。
[本谷夏樹]
(田岡俊次 軍事ジャーナリスト / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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