日本大百科全書(ニッポニカ) 「情報活用能力」の意味・わかりやすい解説
情報活用能力
じょうほうかつようのうりょく
情報や情報手段を目的に基づいて選択し、活用するために必要な個人の基礎的資質。文部科学省では具体的に以下のようなものをあげている。(1)情報活用の実践力 課題や目的に応じ、情報手段を適切に活用し、必要な情報を収集・判断・表現・処理・創造するとともに、受け手の状況を踏まえて情報発信や伝達を行う力。(2)情報の科学的な理解 情報手段によって異なる特性を理解し、自分自身の活用方法を評価・改善するための基礎的な理論や方法の理解。(3)情報社会に参画する態度 情報や情報技術の役割や影響の理解、情報モラルの必要性と情報に対する責任、望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度。これらは、広義に情報リテラシーやコンピュータ・リテラシーとして、従来膨大な情報を使いこなし、自らの目的をなし得るために重要視されてきたものである。
文部科学省では、情報活用能力が将来的に不可欠な能力になるとして、小・中・高等学校を通じてバランスよく育成することを目ざしている。2008年(平成20)の学習指導要領改訂においては、小学校の段階でコンピュータや情報通信ネットワークに慣れ親しみ、中学校以降では生徒自身で正しい情報モラルを身につけながら、ICT(情報通信技術)を適切かつ主体的に活用する旨が明示され、一般教科や道徳を通して幅広く実施されることが盛り込まれた。大学入試センター試験にかえて2020年度からの実施を目ざす新たな試験制度では、教科横断型の合教科型問題が重視される予定である。そのなかで情報活用能力は、従来の教科を超えて出題される問題を解くために不可欠な能力の一つになると想定されている。
[編集部]
情報活用能力調査
文部科学省が児童生徒の情報活用能力を育成する目的で、学習指導の改善や教育課程を検討する基礎資料を得るために実施する調査。2013年(平成25)10月から翌2014年1月にかけて、コンピュータを使用した情報活用能力を測定する調査として初めて実施された。調査対象は、全国の国公私立の小学校116校の5年生から3343人、中学校104校の2年生から3338人が抽出された。調査内容は前記の情報活用能力の三つの基礎的資質に基づいて、計16問が出題された。対象の児童生徒は2単位時間の間に、ガイダンス、文字入力、質問調査などに対し、与えられたノート型コンピュータを使って回答した。たとえば、小学生向けでは、「トンボについて調べよう」という設問で、キーボードやマウスを使いながら、複数のウェブページで正しい情報を収集・選択し、正解を得る力が求められた。また、「ブログの影響を知ろう」という設問では、利用に関する基礎的な知識を得るとともに、情報モラルに対するスキルが測定されるという内容であった。小・中学校ともに、各教科や道徳、総合的な学習の時間のほか、日常生活で経験すると思われる状況などで、情報を活用する能力を試される問題が中心となっている。なお、児童・生徒におけるコンピュータを使用した学習状況、教員と学校長に対する指導状況や情報通信環境の整備状況に対する質問調査があわせて実施された。
文部科学省が2015年3月に発表した調査結果によれば、小学生、中学生ともに、整理された情報の内容を読み取ることや一覧になった情報を整理し、解釈するという問題では、正答と準正答をあわせた通過率が高かった。しかし、目的に応じた特定の情報を複数のウェブページからみつけ、それらを関連づけながら解釈するという点で課題が残った。また、情報の受け手の状況に応じた情報発信、インターネット上における他人の情報の取り扱いなどに関しても、情報モラルについて未成熟な面がみられる結果となった。
[編集部]