日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
感覚論(コンディヤックの著書)
かんかくろん
Traité des sensations
18世紀フランスの哲学者コンディヤックの主著。1754年刊。ロック以来の感覚と反省という知識の起源の二元性を克服して、コンディヤックは感覚一元論の立場にたつ。すなわち彼は、「内部をわれわれと同じように組織づけられ、精神によって生気づけられているが、しかしいかなる観念ももたない彫像」に、順次臭覚、味覚、聴覚などの五官の使用を許すことによって、いかにして諸感覚の結合からわれわれの認識が生ずるかを示そうとするのである。ただし、諸感覚の結合もしくは変形といっても、それは単なる意識事実の進展や変形ではなく、記憶を媒介とした感覚あるいは感情の記号化であり、この記号つまりことばの使用によってわれわれの精神は自由な判断や推理を行うことができる。「知識とはよくできたことばなのである」。
[坂井昭宏]
『加藤周一他訳『感覚論 上』(1948・創元社)』