イギリス経験論(読み)イギリスけいけんろん(英語表記)British empiricism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イギリス経験論」の意味・わかりやすい解説

イギリス経験論
イギリスけいけんろん
British empiricism

合理論と拮抗する形で 17~18世紀のイギリスに現れた哲学思潮。哲学史的分類としては,大陸合理論,ドイツ観念論などに対して用いられる。すべての哲学概念の有効性を人間経験の裏づけから判断するもので,一般にロックを確立者とするが,淵源はすでにフランシス・ベーコンやアイザック・ニュートンにある。この説はロック以後バークリーヒュームおよびその後継者により展開された。その関心事は,(1) 観念起源,(2) 真実の可能性の探究にあった。ロックは当時の本有観念説に反対し,心は元来白紙 (→タブラ・ラサ ) で,その内容は感覚と反省から得られると説いた。この傾向は,「在るとは知覚されること (エッセ・エスト・ペルキピ ) 」であるとするバークリーの主観的観念論に展開され,さらには認識の形而上学的客観性を否定するヒュームの不可知論にいたった。このような人間の合理性の権利を主張する考えは,当時の市民社会形成の基盤ともなり,フランス革命を思想的に準備し,ドイツではカント哲学を生み出した。

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