慣れる(読み)ナレル

デジタル大辞泉 「慣れる」の意味・読み・例文・類語

な・れる【慣れる/×馴れる】

[動ラ下一][文]な・る[ラ下二]
その状態に長く置かれたり、たびたびそれを経験したりして、違和感がなくなる。通常のこととして受け入れられるようになる。「その土地気候に―・れる」「移動する車中での睡眠に―・れる」「彼女の気まぐれにはもう―・れた」「住み―・れる」
経験を重ねて、そのことがうまくできるようになる。習熟する。「患者の扱いに―・れる」「―・れた手つき」「旅―・れる」
道具などが、からだになじむ。「―・れた靴で出かける」「―・れた万年筆で書く」
(馴れる)
㋐その人に対して、違和感がなくなる。その人に親しみの気持ちをもつようになる。「子供が家庭教師に―・れる」「新しい上司に―・れる」
動物が、人間に対して、警戒心などを抱かなくなる。「人に―・れない馬」
[類語]慣らす手慣れる物慣れる慣れっこ場慣れ口慣らし足慣らし手慣らし

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「慣れる」の意味・読み・例文・類語

な・れる【慣・馴・狎・熟】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]な・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙
  2. あるものや事態にたびたび出会ったり経験したりしたために常のこととなる。珍しくなくなる。
    1. [初出の実例]「年ごろ、常のあつしさになり給へれば、御目なれて、猶しばし心みよと、のみの給はするに、日々におもり給ひて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  3. たびたび行なってそのことに熟達する。習熟する。さらに、よく気がきく、巧みであるなどの意としても用いる。
    1. [初出の実例]「中納言殿は、いとささやかになれたる人の、らうらうじきなり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲上)
    2. 「これより大なる事を仕ても、あちへ馴れたる人は、目にたたず咎めもなし」(出典:随筆・槐記‐享保一二年(1727)八月晦日)
  4. 親しむ。近付きになって、気持の上でも親しくなることをいう。
    1. [初出の実例]「苗代の小水葱(こなぎ)が花を衣(きぬ)に摺り奈流留(ナルル)まにまにあぜか愛(かな)しけ」(出典万葉集(8C後)一四・三五七六)
    2. 「春やあらぬ月は見し夜の空ながらなれし昔の影ぞ恋しき」(出典:金槐和歌集(1213)恋)
  5. あまりにもなれなれしくふるまう。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
    1. [初出の実例]「はばかりもなく聞ゆ。心やすく、若くおはすれば、なれ聞えたるなめり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
  6. 衣類などがからだになじむ。着なれて、ふだん着のように気楽に着こなせるさまについていう。
    1. [初出の実例]「紐解かず 丸寐をすれば 吾が着たる 衣は奈礼(ナレ)ぬ」(出典:万葉集(8C後)九・一七八七)
  7. 長く使って、古くなる。みすぼらしくなる。やつれる。
    1. [初出の実例]「御調度どもを、いと古体になれたるが、昔様にてうるはしきを」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
  8. 食べ物などが新鮮でなくなる。腐る。
    1. [初出の実例]「はやくこそ六角町のうり魚のなれぬ先よりかはりはてけれ」(出典:七十一番職人歌合(1500頃か)一五番)
  9. すしなど、ほどよく時間がたって、味加減がよくなる。熟成する。熟す。
    1. [初出の実例]「一夜ずしの仕様〈略〉一夜になれ申」(出典:料理物語(1643)二〇)

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