慶長版(読み)ケイチョウバン

デジタル大辞泉 「慶長版」の意味・読み・例文・類語

けいちょう‐ばん〔ケイチヤウ‐〕【慶長版】

慶長年間に木製活字印刷・出版された書籍総称慶長活字本

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改訂新版 世界大百科事典 「慶長版」の意味・わかりやすい解説

慶長版 (けいちょうばん)

日本において,慶長年間(1596-1615)に開版された出版物の総称。(1)1597年の《錦繡(きんしゆう)段》《勧学文》に始まり,99年の《日本書紀神代巻》《古文孝経》などを経て1603年の《白氏五妃曲》にいたる後陽成天皇勅版,(2)1599年の《孔子家語》《六韜(りくとう)》《三略》に始まり,1600年の《貞観政要》その他を経て06年の《七書》にいたる徳川家康伏見版,(3)徳川家康駿府(すんぷ)に引退してから金地院崇伝,林道春に命じて開版させた15年の《大蔵一覧集》(いわゆる駿河版)のほか,(4)1605年富春堂五十川了庵が刊行した《太平記》その他がこれに属する。勅版や伏見版は大形の木活字本(古活字版)であるが,駿河版は銅活字を用いた。ほかに1597年の《節用集》など,民間あるいは寺院でも大いに出版事業が興隆した。その原因には,後陽成天皇の好学,家康の文治政策などが数えられるにしても,文禄・慶長の役に朝鮮から持ち帰った銅活字と,それによる印刷出版術の導入が大きな刺激となったことはいなみがたい。しかし当時は印刷の技術が稚拙で,数十部を印刷する間にも版面高低が生じたらしく,しかも組みかえの手数が煩わしいので,慶長以後は銅活字,木活字とも後退し,整版が江戸時代出版事業の本流となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「慶長版」の意味・わかりやすい解説

慶長版
けいちょうばん

慶長古活字版ともいう。徳川家康の命で慶長年間 (1596~1615) に活字で出版された書物の総称。文禄1 (1592) 年からの朝鮮出兵によってもたらされた活字印刷技術によるもので,『貞観政要』『吾妻鏡』などが有名。

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