徳川家康が駿府(すんぷ)に隠退してから以心崇伝(いしんすうでん),林道春に命じて開版させた古活字版(こかつじばん)。家康は江戸幕府成立後その政策に文治主義をとり入れて,学問を奨励し,また多くの開版事業を行った。そのうち1606年(慶長11)にいわゆる伏見版の最後のものである《武経七書》を印行して後,一時の中絶をおいて,15年(元和1)に開版された《大蔵一覧集(だいぞういちらんしゆう)》と,翌16年の《群書治要(ぐんしよちよう)》の二つを駿河版と称する。前者は以心崇伝が駿府の家康へ献上した同書の写本を契機に開版されたもので,3ヵ月を費して125部を印行し,諸方の寺社に寄進された。後者は完成の前に家康が急逝している。伏見版,駿河版ともに古活字版の一つとして珍重されているが,伏見版が木活字本であったのに対し駿河版は銅活字本であり,現在その銅活字(重要文化財)は凸版印刷(株)が所有している。
執筆者:竹上 深
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徳川家康が晩年駿府(すんぷ)(静岡市)に退隠してのち、以心(いしん)(金地院(こんちいん))崇伝(すうでん)・林羅山(はやしらざん)(道春(どうしゅん))らに命じ、銅活字を用いて出版した書物。伏見(ふしみ)版とともに家康が刊行した書物として名高い。その刊行事情は崇伝の『本光国師(ほんこうこくし)日記』に詳しい。まず1615年(元和1)に『大蔵(だいぞう)一覧集』を開版し、125部を印行、ついで翌年には『群書治要(ぐんしょちよう)』を刊行したが、家康は完成の前に急逝した。駿河版の銅活字(重要文化財)は現在、凸版印刷(株)の所蔵となっている。
[金子和正]
『川瀬一馬著『増補古活字版之研究』(1967・日本古書籍商協会)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…日本において,慶長年間(1596‐1615)に開版された出版物の総称。(1)1597年の《錦繡(きんしゆう)段》《勧学文》に始まり,99年の《日本書紀神代巻》《古文孝経》などを経て1603年の《白氏五妃曲》にいたる後陽成天皇の勅版,(2)1599年の《孔子家語》《六韜(りくとう)》《三略》に始まり,1600年の《貞観政要》その他を経て06年の《七書》にいたる徳川家康の伏見版,(3)徳川家康が駿府(すんぷ)に引退してから金地院崇伝,林道春に命じて開版させた15年の《大蔵一覧集》(いわゆる駿河版)のほか,(4)1605年富春堂五十川了庵が刊行した《太平記》その他がこれに属する。勅版や伏見版は大形の木活字本(古活字版)であるが,駿河版は銅活字を用いた。…
※「駿河版」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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