我が身を抓って人の痛さを知れ(読み)ワガミヲツネッテヒトノイタサヲシレ

デジタル大辞泉 の解説

つねってひといたさを

自分苦痛にひきくらべて、他人の苦痛を思いやれ。

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精選版 日本国語大辞典 の解説

わが【我が】 身(み)を=抓(つめ・つね)って[=抓(つ)んで・ひねりて]人(ひと)の痛(いた)さを知(し)

自分の苦痛にひきくらべて、人の苦痛を思いやれ。自分の身のこととして、他の人のことを考えよ。
※古文真宝彦龍抄(1490頃)「以五寒人寒我身をつんで人のいたさを知ぞ」

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ことわざを知る辞典 の解説

我が身を抓って人の痛さを知れ

自分の体をつねってみれば、他人の苦痛がよくわかる。自分が同じ立場ならどれほど痛いかを感じ取り、人を思いやらなくてはいけないというたとえ。

[使用例] 謙虚になってもらいたい。そのためにも、医者は時折り病むとよい。患者になって同僚後輩から見下ろされるベッドの人の気持ちを味わえば、患者への接し方もおのずと改善されるだろうと思う。我が身をつねって人の痛さを知ることである[時実新子*再婚ですが、よろしく|1995]

[使用例] どうしたら他人の心の痛みがわかる人間になれるのでしょうか。答えは、自分が痛みを経験し、そこから思いやりの心を育てることにあります。「我が身をつねって、人の痛さを知れ」と母は口癖のようにいっていたものです[渡辺和子*目に見えないけれど大切なもの|2000]

[解説] 多くの人が幼時に耳にして育ち、時には他の子どもに乱暴なことをして、実際に近親者につねられたこともあったのではないでしょうか。いまも子育てなかで、生きて使われている表現です。格言では、「己れの欲せざるところを人に施すなかれ」(論語)といいますが、ことわざは、幼い子どもでもわかる言い方で、内側から共感を引き出し、相手を思いやる心を教えてくれます。
 鎌倉幕府執権に次ぐ地位にあった北条重時(1198~1261)は、「極楽寺殿御消息」と呼ばれる家訓に、「女などのたとえに、身をつみて人のいたさをしるともうす本説ある事也」と書き遺しています。この「たとえ」はことわざのことで、「本説ある」は道理にかなっているということでしょう。現在とほぼ同じ表現が八百年ほど昔から知られ、当時の女性などが口にしていたことがわかります。

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