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戦争放棄 せんそうほうき

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

戦争放棄
せんそうほうき

戦争に訴えることを法的に禁止すること。戦争放棄に関する規定はすでに 1791年のフランス憲法にみられるが,19世紀には無差別戦争観が支配的で,戦争放棄の思想はその後定着しなかった。ところが 20世紀に入って 1928年の「戦争抛棄ニ関スル条約」 (→不戦条約 ) をおもな契機に侵略戦争の放棄が次第に広がりはじめ,とりわけ第2次世界大戦後,憲法規定中に戦争放棄に関する規定をおくものが散見されるようになった。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

戦争放棄
せんそうほうき

戦争放棄に関する条約」または「ケロッグブリアン条約」(いわゆる不戦条約)以来使われるようになったことばで、日本では日本国憲法第2章の表題「戦争の放棄」に用いられている。[池田政章]

戦争放棄の史的背景

人間の歴史は古くから戦争に明け暮れており、したがって戦争を抑制しようとする人間の努力も、その歴史とともに古い。すでにギリシアの都市国家時代には、一方で祖国防衛戦争を正当化する正戦(正義のための戦い)論を生み出しているが、他方、国家間の仲裁裁判制度がつくられ、戦争なき社会を志向する世界市民主義が提唱された。キリスト教は、ローマ帝国によって公認されると、その初期にもっていた絶対的非戦主義を捨てて、神学によって正戦論を基礎づけ、軍旗に十字架を掲げるに至った。中世のキリスト教は政治権力と結び付いて、非戦主義から遠く隔たるところにあった。
 平和思想がその後の歴史に登場するのは16世紀になってからである。この世紀最大の哲学者エラスムスは「平和の訴え」を書いて正戦論を批判した。17世紀には、国際法の父といわれるグロティウスが、『戦争と平和の法』のなかで、正戦論を自然法によって消化し、戦争に対して初めて法的制限を加えた。啓蒙(けいもう)時代の平和思想家として逸することのできないのはサン・ピエールである。彼は『永久平和の草案』三巻を著し、正戦論に根本的批判を加えて、戦争放棄と軍備撤廃を内容とする国際恒久平和組織=ヨーロッパ連合を構想し、これを実現するための条約案をつくり、各国にその採択を提唱した。またカントは、「永遠の平和のために」と題して、永遠の平和のための哲学的草案を世に送った。
 このような平和思想の積み重ねのなかで、20世紀の国際社会がその通念としてもったものは、侵略戦争の否定と自衛戦争の肯定であり、「戦争放棄に関する条約」(不戦条約)はその思想の国際的表現であるといってよい。現在の国際連合憲章では、国際紛争の平和的手段による解決(2条3)を示しながらも、各加盟国は個別的・集団的自衛権を有する(51条)として、自衛戦争を否定しきるには至っていない。[池田政章]

各国憲法の立法例

戦争放棄を憲法に規定した立法例は、従来においてもないわけではない。しかし、放棄した戦争の範囲は侵略戦争に限定され、自衛戦争、制裁戦争まで放棄したのは日本国憲法のみである。侵略戦争を放棄した憲法の例は古く、その最初のものはフランス革命憲法(1791)である。そこでは「フランス国民は、征服の目的をもって、いかなる戦争をも行うことを放棄し、またいかなる国民の自由に対しても決して武力を行使しない」(3章一節2条)と規定されている。この規定は二月革命憲法(1848)前文、第四共和国憲法(1946)前文にふたたび復活している。そのほかブラジル憲法(1891、1924、1946)、東ドイツ憲法(1947)、イタリア憲法(1946)などの例がある。[池田政章]

日本国憲法第9条の成立とその解釈

憲法第9条の基礎となったのは、占領軍総司令官マッカーサー元帥が、1946年(昭和21)2月3日に日本国憲法草案起草のために総司令部民政局に示したという「マッカーサー覚書」である。そこには「国家の主権的権利としての戦争を廃棄する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、および自己の安全を維持するための手段としてのそれをも、放棄する」と記され、全面的に戦争が放棄されている。戦争の放棄は、時の首相幣原(しではら)喜重郎の発想によったともいわれている。しかし、同年3月6日に発表された「憲法改正草案要綱」では、1項で侵略戦争を放棄し、ついで2項で自衛戦争の放棄に及ぶという構成に変わり、しかも帝国議会の審議に際して、衆議院で2項の冒頭に「前項の目的を達するため」という文言(もんごん)が加えられたため、のちに自衛のための戦力の不保持は留保されているとの解釈を生む余地を与えることになった。つまり、第9条には「……国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」(1項)、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」(2項)と規定している。この規定が、すべての戦争を放棄したのか、侵略戦争だけを放棄したのかについては、解釈が分かれている。学界の多数説は、自衛権を否定しないが、戦争は全面的に放棄したとみる。したがって自衛のための軍隊ももてないことになる。それに対し、政府の解釈は、不戦条約の解釈に従って、国際紛争を解決する手段としての戦争とは侵略戦争をさすから、放棄されたのは侵略戦争のみであり、自衛戦争と制裁戦争は放棄されていない。したがって、自衛戦争のための戦力は保持を禁止されていないと説くのである。[池田政章]

安全保障と戦争放棄

憲法第9条で戦争の放棄と戦力の不保持を規定したことにより、日本の安全保障をどうするかという問題をめぐって、憲法改正とのかかわりのなかで大きく論議されてきた。憲法が理想とするところは、世界連邦の実現と世界警察による安全保障方式であろう。しかし、世界の情勢はその理想とはほど遠い。そこで現在考えられているものに、国際連合による安全保障、永世中立による安全保障、地域的・個別的安全保障協定による安全保障などの方式がある。日本が現実に採用しているのは、この最後の方式であり、日米安全保障条約のもとで日本の平和が確保されているのが現状である。この方式のもとで、政府の見解に従って、自衛戦争・制裁戦争が憲法上禁止されていないと考えると、他国に侵略が行われた場合でも、集団的自衛権発動の名のもとに、たとえば極東地域に海外派兵することが考えられないわけではない。多数説はこのような行動が戦争放棄を規定する憲法の精神から大きく外れるとして強く非難する。そこで、国際関係の現状を踏まえて、それを前提に日本の安全保障を議論する人たちは、憲法第9条はあまりに理想的すぎるとして、その改正を主張するのである。[池田政章]

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