扁桃周囲膿瘍(読み)へんとうしゅういのうよう(へんとうしゅういえん)(その他表記)Peritonsillar abscess (Peritonsillitis)

六訂版 家庭医学大全科 「扁桃周囲膿瘍」の解説

扁桃周囲膿瘍(扁桃周囲炎)
へんとうしゅういのうよう(へんとうしゅういえん)
Peritonsillar abscess (Peritonsillitis)
(のどの病気)

どんな病気か

 急性扁桃炎に続発し、口蓋扁桃(こうがいへんとう)図12図13)の周囲炎症が及ぶことで起こります。30代の男性に多く発症します。扁桃に生じた炎症が扁桃被膜外に波及して扁桃周囲炎を生じ、さらに膿瘍を形成すると考えられています。

原因は何か

 原因菌としては、急性扁桃炎の原因菌に加えて嫌気性菌(けんきせいきん)(空気を嫌う菌)が重要です。

症状の現れ方

 急性扁桃炎に引き続いて発症し、激烈な咽頭痛が特徴です。通常は片側だけです。感染範囲が広がると耳への放散痛、開口障害が出現します。嚥下痛(えんげつう)も高度で、唾液(だえき)を飲むことができなくなり、よだれをたらします。

 全身的には、高熱を伴い、経口摂取がほとんどできなくなり、全身倦怠感(けんたいかん)脱水状態となります。

検査と診断

 口内を調べると、口蓋扁桃のみならず、その周囲の粘膜が強く赤く腫脹(しゅちょう)し、扁桃が口のなかに張り出しています(図14)。膿瘍部を針で刺して膿汁が吸引されれば診断できます。

 しかし、必ずしも膿瘍部が穿刺(せんし)できるとは限りません。そのため、最近ではCTや超音波検査で膿瘍の場所を診断することがあります。

 その他の検査は急性扁桃炎と同様です。

治療の方法

 扁桃周囲炎と、それが進展した扁桃周囲膿瘍の区別が大切です。扁桃周囲炎の場合は、抗生剤を主体とした保存療法が選択されます。

 しかし、扁桃周囲膿瘍では、保存的治療よりも膿汁の排泄を目的にした治療が重要です。膿汁の排泄には、膿瘍の場所や程度を考慮して、注射針で穿刺吸引する場合と、局所麻酔後にメスで1~2㎝程度を切開する場合があります。切開後には、十分に排膿するためにガーゼドレーンを置くことがあります。

 外科処置に加えて、点滴注射により抗生剤を投与し、脱水の改善を図ります。

 緊急手術に対応できる施設では、積極的に扁桃摘出術(コラム)を行い、治療期間の短縮再発予防を図ることがあります。

本田 耕平, 宮崎 総一郎


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

知恵蔵mini 「扁桃周囲膿瘍」の解説

扁桃周囲膿瘍

急性扁桃炎が悪化した結果、扁桃腺の周囲にまで炎症が及び、化膿潰瘍を起こした状態をいう。非常に激しい喉の痛みを生じ、食事はもちろん、口を開けること、唾液を飲み込むことすら困難となる。高熱、全身倦怠、脱水症状などを伴い、放置して悪化した場合は死に至ることもある。通常、症状は左右のどちらか片側に起こり、30代の男性に多く発症する。外科的に膿汁を排泄させ、抗生物質の投与、脱水の改善などを行うことにより快癒する。再発を繰り返す場合には、扁桃摘出手術を行うこともある。

(2013-5-24)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

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