デジタル大辞泉
「心内膜炎」の意味・読み・例文・類語
しんないまく‐えん【心内膜炎】
心臓の内側を覆う膜の炎症。高熱・全身倦怠・心不全などの症状を呈する。リウマチ熱による場合と、抜歯・扁桃摘出などに起因する細菌感染による場合とがある。→心膜炎
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しんないまく‐えん【心内膜炎】
- 〘 名詞 〙 心臓の内腔や弁膜をおおう薄い膜様組織層に起こった炎症。リウマチ熱、梅毒などの病気があって起こるものと、細菌によるものとがある。
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しんないまくえん【心内膜炎 Endocarditis】
[どんな病気か]
心筋のもっとも内側(心内腔側(しんないくうがわ))をおおう心内膜に炎症がおこる病気です。発熱、心雑音、息切れ、動悸(どうき)、不整脈(ふせいみゃく)など心臓症状のほか、心臓、脳、腎臓(じんぞう)などに血栓(けっせん)・塞栓(そくせん)症状をおこすことがあります。
原因は、大きく分けて、つぎの3つによります。
■感染性心内膜炎(かんせんせいしんないまくえん)
心内膜に細菌(レンサ球菌(きゅうきん)、ブドウ球菌など)や真菌(しんきん)(かび)などの病原性微生物が感染しておこるものです。
抜歯(ばっし)などの歯の治療、鼻やのどの治療、化膿(かのう)した傷の切開、泌尿器科(ひにょうきか)または婦人科の手術を受けた後などに、傷口から細菌やかびが血液中に入り込み(菌血症(きんけつしょう))、心臓に達しておこります。健康な人には、めったにおこりませんが、心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)や先天的な心臓疾患がある人におこりやすいとされています。
■リウマチ熱による心内膜炎
溶血性レンサ球菌(溶連菌)がのどに感染すると、免疫反応の異常がおこり、発熱、発疹(ほっしん)、全身の関節炎などの症状とともに、心内膜炎をおこします。
■膠原病(こうげんびょう)(とくに全身性エリテマトーデス)をともなう心内膜炎
膠原病(免疫のしくみとはたらきの「[膠原病について]」)という自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)(自分のからだの成分に対して免疫反応がおこる病気)になると、皮膚、関節、腎臓などにさまざまの症状が出ますが、その1つに心内膜炎があります。
[検査と診断]
一般的な診察(問診、触診、聴診)のほか、必要に応じて血液検査、胸部X線検査、心電図、心臓超音波(心エコー図)検査が行なわれます。それらの結果が総合的に判断されて診断されます。
[治療]
いずれの場合も、薬剤による治療が行なわれます。
●感染性心内膜炎の場合
入院して、原因となる病原菌を血液培養検査で見つけ、その病原菌に応じた抗生物質が4~8週間注射されます。
この間に改善しないときや、重症の心臓弁膜症を合併した場合は、手術が行なわれることもあります。
●リウマチ熱の場合
発症の原因となっている溶血性レンサ球菌に対し、ペニシリンをはじめとした抗生物質を使用します。症状の程度により副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイド)薬が使用されることもあります。
●全身性エリテマトーデスの場合
もともとの原因である全身性エリテマトーデスの治療が行なわれることで、心内膜炎も改善します。そのために、副腎皮質ホルモン薬が使用されます。
[日常生活の注意]
感染性心内膜炎は、日ごろから口腔内(こうくうない)を清潔に保つことで予防できます。心臓弁膜症や先天的心疾患がある人では、歯科や耳鼻科の処置や手術を受ける前に抗生物質が予防的に使用されます。
リウマチ熱は、再発防止が重要であるため、抗生物質が長期間使用されます。子どもの場合は、おとなになるまで続けることもあります。
全身性エリテマトーデスの場合は、かかりつけの医師の指導に基づいて、全身の症状の悪化を防ぐようにつとめます。
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心内膜炎 (しんないまくえん)
endocarditis
一部動脈内膜も含め心臓の内膜や弁膜に炎症性病変が加わり,急性または慢性の弁の機能障害が生じたり,全身性感染症の病巣となったりする疾患の総称。原因から感染性と非感染性とに分けられ,前者では細菌,真菌,リケッチアが病原体となる。後者には免疫機序によって発症したリウマチ性心内膜炎,全身性エリテマトーデスにみられる非定型的心内膜炎などがある。しかし一般的に心内膜炎という場合,感染性心内膜炎,とくに細菌性心内膜炎bacterial endocarditisをさしていうことが多く,以下細菌性心内膜炎について述べる。
起炎菌としては病原性の比較的弱い緑色連鎖球菌によるものが半数近く認められ,次いで強毒性の黄色ブドウ球菌によるものがみられる。これらの病原菌は抜歯,扁桃摘出,上気道感染,流産,手術などの際に血液中に侵入し,もともと障害されているリウマチ性病変の弁膜や先天性心臓病の心内膜障害部位を侵す。しかし異常のない心内膜や弁膜も侵すことがある。病原性の強い菌に侵された場合は,数mmのいぼ状病変(疣贅(ゆうぜい))が形成され弁の破壊も強い。適切な治療が行われなければ心内膜,弁膜に病原菌の繁殖が起こり,敗血症となり,疣贅が離れて血流にのり,全身の動脈に塞栓(そくせん)を起こす。細菌性心内膜炎は発熱,全身倦怠感などで発病するが,身体的には新しい心雑音が発生し,脾腫や肝腫を認めることが多い。この疾患が疑われるときには動脈・静脈血の培養を行い確定診断することが可能である。また近年は心エコー図によって疣贅を発見することが可能となった。抗生物質の発見される以前にはほぼ100%死に至っていたが,適切な抗生物質を早期に投与開始すれば,70~80%の生存率が得られる。しかし弁障害によって心不全が併発したり,人工弁置換した患者に起こったり,疣贅によって脳動脈や冠動脈の塞栓が起こった場合には重篤な転帰をとる。
→心臓弁膜症
執筆者:柳沼 淑夫
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心内膜炎【しんないまくえん】
心内膜(心臓)の炎症。非細菌性心内膜炎と細菌性心内膜炎に大別される。前者は大部分がリウマチ熱によって起こり,発熱,頻脈(ひんみゃく),関節痛などを呈する。後者は細菌感染によって起こり,従来は急性(各種化膿菌)と亜急性(おもに緑色連鎖球菌)とに分けていたが,現在では両者を含めて感染性心内膜炎と呼んでいる。健康な人にはまれでリウマチ性弁膜症や先天性心臓病のある場合にかかりやすく,発熱,悪寒(おかん),全身倦怠(けんたい)感などを呈する。治療は絶対安静,抗生物質,強心薬,解熱薬などを投与する。
→関連項目心室中隔欠損症|心臓病|心電図|心不全|僧帽弁閉鎖不全症|動脈管開存|扁桃炎|扁桃肥大
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心内膜炎
しんないまくえん
endocarditis
心内膜に炎症をきたす疾患群の総称で、細菌性(感染性)と非細菌性の2群に大別されるが、いずれの場合も心弁膜が冒されることが多い。
[井上通敏]
上気道炎や抜歯などが原因で血中に細菌が侵入し、心内膜とくに弁膜に感染巣が形成されることにより発症することが多い。起炎菌は黄色ブドウ球菌と緑色連鎖球菌が多く、通常、黄色ブドウ球菌による場合は急性の経過をとり、緑色連鎖球菌の場合は亜急性の経過をとる。症状は多彩で、心雑音やうっ血性心不全などの心症候をはじめ、発熱、肝脾腫(ひしゅ)、貧血、白血球増加または減少、血沈促進などの感染症候、溢血斑(いっけつはん)、爪下(そうか)出血斑、顕微鏡的血尿などの血管塞栓(そくせん)症候といった全身症候が出現する。診断を確定するためには、血液培養による起炎菌の同定が必要である。治療は、絶対安静を守るとともに抗生物質の投与を行い、心不全の治療、ときには副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤の投与が併用される。内科的治療が奏効せず、病状が悪化する場合には、人工弁による弁置換などの外科的治療を必要とすることがある。抗生物質の出現以前には100%の死亡率であったが、抗生物質の使用により死亡率は年々減少している。しかし再感染することがまれではなく、初期に十分に治療することが重要である。
[井上通敏]
代表的なものがリウマチ性心内膜炎で、ほかに全身性エリテマトーデスにみられる弁膜にいぼ状のものが多発するリブマン‐ザックスLibman-Sachs心内膜炎などがある。リウマチ性心内膜炎はリウマチ熱によるリウマチ性変化で心内膜が冒され、弁膜とくに僧帽弁、ついで大動脈弁が冒されることが多く、心臓弁膜症の原因として重要である。
[井上通敏]
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心内膜炎
しんないまくえん
endocarditis
心臓の内面膜の炎症で,好発部は弁膜部。普通,感染性の心内膜炎をいう。これ以外のものとしては急性リウマチ性の部分症状であるリウマチ性心内膜炎が多い。感染性心内膜炎は以前は細菌性心内膜炎といわれたもので,起炎菌としては緑色レンサ球菌が最も多く,次いでブドウ球菌,緑膿菌などがある。これらは口腔内や腸管内の常在菌なので,抜歯のときなどに心内膜に感染することが多い。治療は抗生物質の投与を中心とした原因療法を主とするが,予防的に抜歯などの際に投与することもある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報