挙状(読み)キョジョウ

デジタル大辞泉 「挙状」の意味・読み・例文・類語

きょ‐じょう〔‐ジヤウ〕【挙状】

鎌倉室町時代官位身分の低い者が訴訟しようとするときに、所属長官が与えた添え状。また、代理人をたてて訴訟するときに、その旨を裁判所に通知する文書

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精選版 日本国語大辞典 「挙状」の意味・読み・例文・類語

きょ‐じょう‥ジャウ【挙状】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 所職や官位をのぞむ者を適当な個人や機関に推薦する書状吹挙(すいきょじょう)
    1. [初出の実例]「若考校課試。而不実。及選官乖於挙状。以故不職者。減一等」(出典:律(718)職制)
  3. 鎌倉・室町時代、訴訟手続の際に添付された文書。
    1. (イ) 地頭御家人以下の郎党そのほかの他人の支配に属している者が、自分の名義で訴訟するときに、主家、本所、地頭などが添えて提出した書状。これがない場合は直訴として受けつけられなかった。
      1. [初出の実例]「不本所挙状越訴事、諸国庄公并神社仏事以本所挙状訴訟之処、不其状者既背道理歟」(出典:御成敗式目(1232)六条)
    2. (ロ) 同じく正員から代官を立てて訴訟を代理させる旨を裁判所に通知する文書。これには独立にひとつの文書を作ることも、裁判所からの問状(といじょう)に対して出す請文のなかでその旨を記すこともあった。
      1. [初出の実例]「番訴陳之刻、惟重他行之間、惟宗帯挙状、可明申之由載之」(出典:都甲文書‐永仁七年(1299)六月二日・鎮西下知状)

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改訂新版 世界大百科事典 「挙状」の意味・わかりやすい解説

挙状 (こじょう)

日本の古代・中世の文書で,一種の推薦状。〈きょじょう〉ともいう。律令制下では,おもに一定の能力を有する学生などの官人任用を貢挙する際に発給されたが(《職制律》),その解体期には〈鴻儒名医の子孫〉というだけで発給されるなど,私的色彩を強めた(《類聚三代格》寛平七年格)。中世では,下位者が自身の統属関係や被官関係から離れた他の機関に対し官職任命,荘園所職,訴訟などに関する利益主張を上申するとき,直属の支配権者や主人から取得する推薦状をいうにいたった。たとえば鎌倉幕府への名主百姓などの出訴は,公領荘園においては本所挙状,地頭領内においては地頭挙状,鎌倉においては地主の吹挙が必要であった。一般に,挙状を得ることは,中世人がその所属する集団の法圏を超えた公的領域において,法的主体として行動するための基本的な手続であったといえよう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「挙状」の意味・わかりやすい解説

挙状
きょじょう

古代・中世における推薦状をいう。律令制では主に官職に任用する際の推薦状を意味したが、中世では推挙状(すいきょじょう)(吹挙状)ともいい、広く推薦・取次・紹介などのために提出する文書をさした。ある人の家来や支配下・領有下の者が官職や荘園所職(しょしき)を希望し、または訴訟を起こすときは、その主人・上司ないし領有権者の挙状を伴うのが通例であった。ことに鎌倉幕府の訴訟手続では、諸国の荘園公領や神社・仏寺の支配下の人々が幕府に訴訟を起こすにはその本所(ほんじょ)の挙状が必要とされ(『御成敗式目』第6条)、庶民の訴訟は諸国ならばその地の地頭(じとう)の挙状、鎌倉中ならばその地主(じしゅ)の挙状を要すると定められた(『吾妻鏡(あずまかがみ)』建長2年4月29日条)。

[小川 信]

『相田二郎著『日本の古文書 上』(1962・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「挙状」の意味・わかりやすい解説

挙状
きょじょう

吹挙状ともいう。律令制下の文書形式。下位の者の官位,所職の所望や訴訟などに関する申し出を上位の者に取次ぐ際,その取次者が出す文書。

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世界大百科事典(旧版)内の挙状の言及

【挙状】より

…中世では,下位者が自身の統属関係や被官関係から離れた他の機関に対し官職任命,荘園所職,訴訟などに関する利益主張を上申するとき,直属の支配権者や主人から取得する推薦状をいうにいたった。たとえば鎌倉幕府への名主百姓などの出訴は,公領荘園においては本所挙状,地頭領内においては地頭挙状,鎌倉においては地主の吹挙が必要であった。一般に,挙状を得ることは,中世人がその所属する集団の法圏を超えた公的領域において,法的主体として行動するための基本的な手続であったといえよう。…

※「挙状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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