振動障害 (しんどうしょうがい)
振動が身体に与える障害は,全身振動によるものと局所振動によるものに大別される。振動障害は振動数と振幅によって起き方が規定される。全身振動による振動障害としては,自律神経系への作用によって脈拍数増加,血圧上昇,末梢血管の収縮,胃腸運動の抑制などが起こり,副腎皮質ホルモンの変化や性周期の乱れなどもある。物理的作用からの胃下垂,腎下垂や脊柱の変形異常なども頻度が高くなる。局所振動による障害としては,白蠟(はくろう)病の名で昭和40年代初めころから社会的にも関心がもたれるようになった職業性レイノー現象がある。振動障害によるレイノー現象は,必ずしも手指の末梢血管の機能障害だけにとどまらず,中枢神経系の機能障害にもとづく頭重感,頭痛,めまい,睡眠障害や,ひじ,頸椎,腰椎などの骨関節系の障害も伴う全身性の障害であり,振動病vibration diseaseという名称を適切とする意見が多い。全身振動についての許容基準は,国際音響機構(ISO),日本産業衛生学会から振動数,加速度,暴露時間に応じて勧告が出されており,局所振動については目下検討されている。ただし労働省は1975年,局所振動の代表的工具であるチェーンソーについて,鋸断時の振動加速度が3g以下,騒音が作業者の耳もとで100dB以下とするように製造・輸入業者に要請した。局所振動障害をひき起こす工具には削岩機,ブッシュクリーナー,タイタンパー,ピッチングハンマー,コンクリートブレーカーなどもあり,今後の注目が必要である。
→振動公害
執筆者:溝口 勲
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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しんどうしょうがいしんどうびょうはくろうびょう【振動障害(振動病/白ろう病)】
削岩機(さくがんき)、チェーンソーなどの振動工具を使用する職業の人におこる障害です。振動工具の使用時間が一般に1000時間を超えると発症します。
●症状
手指や前腕のしびれ感、冷感がおこり、皮膚がろうのように白くなります。感覚が鈍くなったり、過敏になったりすることもあります。
関節の変形や骨の硬化がおこることもあります。
●治療
治るまで、振動工具の使用は禁止です。
体操や運動浴などの運動療法、ホットパックなどの温熱療法、血管拡張薬や鎮静薬(ちんせいやく)の服用を行ないます。
症度がⅡ以上であれば、職業病と認定され、労働者災害補償保険が適用になります。
●予防
振動工具の使用時間の短縮、防振手袋の使用、耳栓(みみせん)の使用、全身の保温などを守ることがたいせつです。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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振動障害
しんどうしょうがい
vibration disease
振動病,振動症候群ともいう。振動によって生じる健康障害のこと。交通機関などでの全身振動によるものと,振動工具の局所振動によるものとがある。全身振動は交感神経緊張状態をもたらし,内分泌系にも影響を及ぼし,胃腸障害,胃や腎臓などの内臓下垂,脊柱の異常,月経障害,眼圧上昇,一時的聴力損失などの障害を起したり,これらの誘因となる。局所振動障害としては骨や関節の障害,しびれや知覚障害などの神経・感覚器の障害,運動機能の障害などがある。手指が蒼白やチアノーゼになるレイノー症状はチェーンソーを使う林業労働者に多発し,白ろう病と呼ばれた。局所振動障害の治療としては温熱療法があるが,症状の進行した状態では振動工具の使用禁止が必要であり,寒冷に身をさらさないことも予防上重要である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の振動障害の言及
【白蠟病】より
…ヨーロッパでもVIWF(vibration induced white finger)と呼ぶ。今では,末梢循環系,末梢神経系,運動器系に現れる障害などをまとめて振動障害と呼んでいる。振動が主原因で,その加速度と周波数によって症状が異なる。…
※「振動障害」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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