振動公害【しんどうこうがい】
人為的原因で発生した振動が生活空間に伝わり,相当範囲にわたる被害者に不快感や経済的損失を与える公害。全身振動の影響は,3Hz以下の低周波振動では動揺病を起こすことがあり,3〜100Hz程度でかつ強い振動の場合は交感神経系や内分泌系の影響(血圧や脈拍数の増加,末梢(まっしょう)血管の収縮,ストレス反応など)をもたらし,局所振動では,振動病(白蝋(はくろう)病)を起こすことがある。しかし,一般に経験する弱い振動では,人体への影響は微弱で一過性であり,不快感という主観的反応に多く関係している。さらに振動値の測定に関する技術的問題もあり,振動公害は,大気,水質,騒音,土壌汚染などの典型7公害の中で,これを規制する関係法規の整備がもっとも遅れていた。ようやく,1976年振動規制法が制定され,工場,事業場,建設工事現場などの振動規制,道路交通による振動に対する措置が定められた。規制方式は騒音規制法に準ずるもので,都道府県知事が振動を規制する地域を指定し,その地域で著しい振動を発生させている特定施設に対し,規制基準を守らせる方式。
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振動公害
しんどうこうがい
vibration hazard
工場,建設工事,鉄道,自動車などの振動が引起す公害。 1960年代から問題にされるようになった。ことに1~12Hzの低周波が最も大きい被害を引起すと考えられている。被害の態様は,(1) 不安感や睡眠妨害,(2) 精密な作業の妨害,(3) 壁面の亀裂など物的損失,(4) 戸,障子などのがたがたいう音の発生などで,新幹線沿線ではかつて地震でいう震度2にあたる 70dB以上の住居が約1万戸あった。また自動車幹線沿道でも同様の実測結果がある。対策は,(1) 工場などでは移転による集団化や基礎の改良,低振動機器への転換,(2) 建設工事では機器,工法の改良,(3) 自動車では速度の制限,通行区分帯の指定など走行方法の改善,道路舗装の改良など,また家屋の防振構造化,都市計画の見直しなども考えられる。法令の整備は他に遅れて 76年,振動規制法が制定され,規制する地域を知事が定めて,住居地域 (第1種区域) とその他の地域 (第2種区域) に分け,工場,事業場など,建設工事,自動車のそれぞれについて規制基準などが定められている。 90年度では全市町村の約半数で地域指定が行われている。また工場などへの改善勧告はなく,行政指導が 266件行われた。
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しんどうこうがい【振動公害】
日本の公害対策基本法に基づけば,振動公害とは事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる振動によって,人の健康または生活環境にかかわる被害が生ずることと定義することができる。周波数範囲は,JIS規格の振動レベル計の振動感覚補正特性と関連して,一般に1~80Hzのものが対象とされている。 振動による最近の苦情の内訳を振動発生源別にみると,建設作業を発生源とするものがもっとも多く,次いで,工場,事業場,道路交通からのものの順となっている。
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