日本大百科全書(ニッポニカ) 「捕手術」の意味・わかりやすい解説
捕手術(とりてじゅつ)
とりてじゅつ
「とりでじゅつ」「ほしゅじゅつ」ともいう。武術の一つ。広義の柔術の一種で、敵を生け捕りにするため、短小の武器または素手(すで)で、捕(と)り、抑(おさ)え、縛(ばく)する術をいう。また取手(とりて)、捕合(とりあい)ともいう。
わが柔術史上もっとも起源が古いとされる、美作(みまさか)(岡山県)の竹内(たけのうち)流では、1620年(元和6)2代の常陸之介久勝(ひたちのすけひさかつ)が、その技(わざ)を後水尾(ごみずのお)天皇の上覧に供し、初めて「日下捕手開山(ひのしたとりでかいざん)」の称号を賜ったと伝える。この流では入門者に、まず小具足組討(こぐそくくみうち)(「腰の廻(まわ)り」という)25手、ついで捕手5手を教授したが、この5手は、「中国の樊噲(はんかい)を越える術理を含む」と自負するもので、これに7尺5寸(約2.48メートル)の縄をもって、速やかに捕縛する早縄(はやなわ)の法を併せ習い、これらを修得して、中段の捕手捕縄四十八手へと進んだ。なお、『武芸小伝』巻9「小具足」の項には、荒木流の荒木無仁斎(ぶじんさい)、要心(ようしん)流の森九左衛門の両名を捕縛の達人としてあげ、夢想(むそう)流の夏原(なつはら)八太夫を小具足の達人としている。
[渡邉一郎]