企業など組織体の効率的運営のためには,全構成メンバーが上層幹部の方針に従い,所与のルールを守り,統一性のある行動をする必要がある。科学的管理法さらには近代的なビューロクラシーの方式においては,この原理が徹底的に守られている。しかしこの方式は一方において,構成メンバーの自発性を抑圧する結果となり,メンバーの仕事への意欲を低下させる欠陥がある。このような欠陥を修正するための方策の一つが提案制度である。提案制度は主として現場の作業方法に関し,第一線現場従事者自身の改善についてのアイデアを,経営上層部に提言することを奨励する制度である。旧来のビューロクラシーのもとにおいては,現場作業の改善も,専門的教育を受けたエリートの手によらねば不可能であるという前提に立っていた。これに対し提案制度はその基本思想として,現場作業従事者自身がみずからの業務の改善を行うための正しい情報と能力をもっているという労働者観に立っている。提案の方式は,個人提案によるか,その提案内容に関連する職場メンバーの集団討議を経た提案とするか,二つに分かれる。日本の場合は後者の方式をとる企業が多い。提案制度は職場のチームワーク向上のためにも有効な方式だとされている。
執筆者:奥田 健二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
従業員の発案を企業側に提案させ、一定の審査によって実現可能なものを採択し、採択された提案に対して賞を与える制度。提案事項は、機械、工具、作業方法、事務手続、製品などの改善やそのためのアイディア等、提案者の業務に関連するものはもとより、企業内のあらゆる問題に及んでよい。提案箱に投入された提案は、一定の期間ごとに提案審査機関によって審査され、評価される。提案審査機関は、公正を期するため、労使で構成することもある。賞としては、賞金、表彰、社内報発表などが用いられる。従業員の参加意欲を高め、同時に業務の改善に資するという効果がある。
[森本三男]
… こういった状況のなかで,人間関係論が提起した基本的問題意識と産業における人間問題解決の具体的なアプローチは,1930年代後半以降とくに40年代において救世主の響きをもってアメリカの産業界に迎えられたのである。多くの企業では,作業などについての従業員の提案を奨励し,採用して参加意識を刺激する提案制度suggestion system,従業員の職場における各種の苦情を受理・処理する苦情処理制度grievance system,さらに積極的に従業員のもつ意見・不満を聴取し,その背後にある情感や態度の特徴を見いだそうとする面接計画,態度調査,ないしモラール・サーベイ等々が行われるようになった。いわばそれらは,要具的,孤立的,(経済)合理的な従業員観から離れて,主体的,集団成員的,没論理的行動の従業員の側面に管理のメスを加えようとするものであった。…
…従業員各自の注意とくふうにより仕事の欠陥を防止し製品やサービスの信頼性を高めるための活動で,ミスをなくすことは一人一人の努力で可能であると考え,許されないミスを防止するためにさまざまな技法を駆使している。以上のほか企業によっては提案グループ(提案制度),安全サークルなどの小集団活動が展開されている。そのなかには労働の〈人間化〉や職場レベルの参加といった自主管理活動をめざしたものも少なくなく,活動目的,推進方法・水準などは実にさまざまである。…
※「提案制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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