改元
かいげん
それまで用いられていた年号を廃して新しい年号にすること。改元には次の五つの場合がある。
(1)天皇の代始による改元。奈良時代の霊亀(れいき)(元正(げんしょう)天皇)、神亀(じんき)(聖武(しょうむ)天皇)など即位当日の改元例もあるが、一般には即位や践祚(せんそ)の翌年に改元される。
(2)祥瑞(しょうずい)の出現による改元。白雉(はくち)の出現による大化(たいか)からの改元を初例として、大宝(たいほう)・慶雲(きょううん)・和銅(わどう)など、飛鳥(あすか)・奈良時代に多い。
(3)天変地異、疫疾、兵乱などの厄災を避けるための改元。彗星(すいせい)(永祚(えいそ))、地震(天慶(てんぎょう))など。
(4)讖緯説(しんいせつ)による辛酉(しんゆう)革命、甲子(かっし)革令の年にあたってその難を避けるための改元。延喜(えんぎ)以後は恒例となった。
(5)その他、室町時代以後将軍の代始に行われた改元など。
改元にあたってはまず年号勘者を定め、各人から幾通りかの新年号案を提出させ、公卿(くぎょう)の審議(難陳)を経て天皇が決定し、詔書をもって公布された。新年号はその年の年首にさかのぼって用いられた。中世には幕府の干渉を受けた場合が多く、江戸時代には幕府の事前の承認が必要とされ、新年号は幕府によって全国に公布された。明治の改元にあたって一世一元と定められ、旧皇室典範の規定により、践祚と同時に枢密院に諮詢(しじゅん)し、天皇が勘定して、即日施行された。日本国憲法に基づく新皇室典範には年号に関する規定が省かれたため、1979年(昭和54)に元号法が制定され、践祚があったときに限り内閣が定めることになった。
[岡田芳朗]
天子、諸侯は即位の翌年に踰年(ゆねん)改元して治世年次を数えたが、のち治世の途中で改元することがおこり、これに名号をつけることは漢の武帝が紀元前140年を建元元年としたことに始まる。その7年を元光と改めたのが改元の初例である。中国においても代始、祥瑞、災異、革命革令などによって改元されたが、元(げん)以後はおおむね代始改元のみで一世一元制が守られた。
[岡田芳朗]
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改元【かいげん】
年(元)号を改めること。中国では魏の恵王がその治世の36年を改めて元年とし,秦の恵文王が14年を改めて元年とした中途改元に始まり,漢の武帝は即位の翌年を建元1年(前140年)とした。その後,瑞祥災禍あるごとに改元され,1年間に4度も行われた例もある。明清に至り一世一元となる。日本では大化改新(645年)の際の大化が元号の初めとされるが,元号が連続して制定されるようになったのは,701年に始まる大宝以後である。→元号
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デジタル大辞泉
「改元」の意味・読み・例文・類語
かい‐げん【改元】
[名](スル)年号(元号)を改めること。改号。「昭和を改元して平成となった」→年号
[補説]行われる理由により、代始改元(天皇の代替わりに行う)、祥瑞改元(珍しい自然現象を天意とみて行う)、災異改元(災害などに際して行う)、革命改元(讖緯説に基づき辛酉・甲子の年に行う)の四つに分けられる。
[類語]改号
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かい‐げん【改元】
〘名〙 (「元」は元号で、年号のこと) 年号を改めること。改号。
※続日本紀‐天平神護元年(765)一月己亥「改二元天平神護一」 〔文中子中説‐問易〕
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かいげん【改元】
年号(元号)を改定する国家行事。日本における年号の使用は645年の大化に始まるが,その後断続があり,継続的に使用されるのは8世紀初頭の大宝,慶雲以降であって,改元行事もこのころから制度化したと考えられる。改元の理由にはおおよそ(1)代始(だいはじめ)改元,(2)祥瑞(しようずい)改元,(3)災異改元,(4)革命改元の4種がある。(1)は天皇の死もしくは譲位によって帝位の交代が行われた際のもので,即位改元ともいう。
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普及版 字通
「改元」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の改元の言及
【元号】より
…大化以前において法隆寺金堂の釈迦三尊像の光背の銘や《伊予国風土記》逸文の道後温泉の碑文などによって法興という年号のあったことが知られるが,これは公式に定められたという徴証がなく,逸年号もしくは広い意味で私年号というべきであろう。650年(大化6)白雉と改元されたが,654年(白雉5)孝徳天皇の没後年号はとだえ,天武天皇の末年に朱鳥の年号が定められたが,これもあとが続かず,701年(文武5)に至り,対馬から金が貢上されたのを機に大宝の年号が建てられた。この建元と同日に新たに制定された令(いわゆる大宝令)の一部が施行された。…
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