デジタル大辞泉
「甲子」の意味・読み・例文・類語
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きのえ‐ね【甲子】
- 〘 名詞 〙
- ① 十干と十二支を組み合わせたものの第一番目。物事のはじまりとして重んじられ、この日にはさまざまな行事が行なわれた。また、この日やどった子は盗人になるという俗説もあり、庚申と同じく、夫婦関係をつつしむ日とされる。こうし。かっし。→干支(えと)。
- [初出の実例]「春はけふきのえ子の日にあひにあひて松も千年の初とそしる 正月一日今日甲子の日なり」(出典:草根集(1473頃)四)
- ② 「きのえねまち(甲子待)」の略。
- [初出の実例]「今日は甲子(キノエネ)でござる程に、相替らずまつらうと存る」(出典:雲形本狂言・大黒連歌(室町末‐近世初))
かっ‐し【甲子】
- 〘 名詞 〙
- ① 十干と十二支とを組み合わせたものの第一番目。きのえね。→干支(えと)。〔書経‐武成〕
- ② 干支(えと)の称。転じて、年齢、歳月。
- [初出の実例]「年長(た)けては毎(つね)に労(いたは)しく甲子を推す、夜寒くしては初めて共に庚申を守る〈許渾〉」(出典:和漢朗詠集(1018頃)下)
- [その他の文献]〔許渾‐送宋処士帰山詩〕
こう‐しカフ‥【甲子】
- 〘 名詞 〙 十干と十二支とを組み合わせたものの第一番目。きのえね。かっし。→干支(えと)。
- [初出の実例]「癸亥甲子(カフシ)の両度の変に」(出典:近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉八)
- [その他の文献]〔呂覧‐勿躬〕
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甲子[温泉] (かし)
福島県西白河郡西郷(にしごう)村西部にある温泉。〈かっしおんせん〉ともいった。東北新幹線新白河駅より西へ約20km,甲子(かつし)山の東麓,阿武隈川源流近くの甲子渓谷(標高900m)の南岸に一軒宿が位置し,浴場は渓谷対岸にある。単純泉,45℃。新緑,紅葉期が特に良い野趣豊かな温泉で,湯治客や那須連峰縦走の登山客の利用も多い。温泉名は河谷に沿う小平地を意味する〈かっし〉〈かっち〉から出たとされるが,1384年(元中1・至徳1)甲子(きのえね)の年に発見されたことによるとする説もある。《白河風土記》によれば,近世初頭に会津の蒲生家の浪人が,白河藩主より湯別当に任じられ,以後その子孫が湯宿を経営してきたとされている。白河藩主松平定信もここに別荘(勝花亭)を建て,たびたび入湯に訪れた。近くの甲子峠(1450m)は会津から白河へ出るのに利用された通路である。ここより東3km付近に1961年甲子温泉から引湯して開発された新甲子温泉があり,付近一帯の甲子高原ではゴルフ,ハイキングなども楽しめる。
執筆者:大澤 貞一郎
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普及版 字通
「甲子」の読み・字形・画数・意味
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甲子
きのえね
十干(じっかん)の甲と十二支の子(ね)にあたる年月日をいう。大黒天の縁日とされ、甲子の夜、子の刻まで起きていて大黒天を祀(まつ)るのを甲子祭と称している。甲子待(まち)ともいい大豆、黒豆、二股(ふたまた)大根を供えて大黒様を祀る。こうすると現世の福を得られるという。『日次紀事(ひなみきじ)』によると、一年中六甲子の夜、禁裏では子(ね)(大黒天)を祀ったという。民間では、甲子ごとに灯心を買うのを子灯心というとある。
[大藤時彦]
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甲子【きのえね】
十干の初めの甲と十二支の初めの子が合する年または日。〈かっし〉とも。年の干支は60年目に一巡するので,60年を一甲子ともいう。甲子の夜に大黒天をまつり,甲子待と称して来福を願った。またこの夜男女の交わりを忌む風習もあった。
甲子[温泉]【かし】
福島県西白河郡西郷(にしごう)村,阿武隈川上流にある。〈かっし〉ともいう。炭酸カルシウム泉,42℃。14世紀の発見を伝える記録があり,江戸時代には白河藩主松平定信が入湯に訪れている。甲子の東4kmに,1961年甲子から引湯した新甲子温泉があり,国民保養温泉に指定されている。ゴルフ場,スキー場がある。東北本線白河駅からバス。
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世界大百科事典(旧版)内の甲子の言及
【甲子[温泉]】より
…〈かっしおんせん〉ともいった。東北新幹線新白河駅より西へ約20km,甲子(かつし)山の東麓,阿武隈川源流近くの甲子渓谷(標高900m)の南岸に一軒宿が位置し,浴場は渓谷対岸にある。単純泉,45℃。…
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