改訂新版 世界大百科事典 「放射化学分析」の意味・わかりやすい解説
放射化学分析 (ほうしゃかがくぶんせき)
radiochemical analysis
放射性の試料に含まれる放射性核種の種類や量を放射能を測ることによって求める方法。これとよく似た用語に放射化分析と放射分析がある。前者は非放射性の試料に中性子などを照射して特定の核種を放射化し,その放射能測定によって非放射性であったもとの核種の量を求める方法である。また後者は放射性物質を一種の指示薬として利用し,その放射能強度の測定から非放射性物質の量を求める方法であり,それぞれ放射化学分析とは区別される。
放射化学分析には目的とする元素の重量を求める場合と,放射性核種の放射能強度を求める場合の2通りがある。前者の場合には,対象とする放射性核種の比放射能がわかっていなければならない。例えば,天然に存在する放射性核種の放射能強度を測定し,同位体存在比から試料中に含まれるその元素量を求める場合などはこれに相当する。後者の例としては,ラジオアイソトープを使用する施設の排水中の放射能測定などが挙げられる。
いずれの場合も放射能強度の絶対測定は容易でないので,あらかじめ含まれる放射性核種の量がわかっている標準溶液との相対的な計測値から求める場合が多い。この目的のために各種標準液が市販されている。
執筆者:石榑 顕吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報